交通を活かしたまちづくり

2016年11月 8日 (火)

ストック効果と社会的共通資本に対するコモンセンス

 宇沢弘文は社会的共有資本とは 自然、制度、インフラ の三要素からなると指摘し、それを認識するコモンセンス を説いている(宇沢「社会的共通資本 の論理 」)。 「社会的共通資本 の論理」では、自然破壊としての水俣病、温暖化。制度資本(教育、医療、金融)。自動車の社会的費用や都市など複合インフラ。この3つの課題が論じられている。自然や制度、都市を社会的共通資本として守ることを説いている。
 一方で、高速道路などに関して、その建設の効果を、計測できる効果(時間短縮、経費削減、事故減少)の三便益のみで計上することが通常である。しかし、効果の数値計測しやすい一部だけを取り上げて評価するだけでは、複合的な自動車の社会的費用を自動車が十分に支払っていないのではないかという宇沢の疑問には答えられていない。また、国民も納得していない。ストック効果をどう表現するかは、今日の道路政策の大きな課題である。
 自動車の社会的費用のように、インフラのマイナス効用を議論することも重要であるが、一方で、我々は既存インフラを所与として考え、社会的共有資本として正当な評価を忘れがちでもある。インフラは、誰かが勝手に用意するものであって、良き点については所与(当然)として意識しない傾向がある。
  計測できない社会的共通資本に対するコモンセンスを発見することも、一方で重要ではないか。複合体である地域生活全体を素手でまさぐるようなコモンセンスの考果が重要だ。高速道路のストック「効果」ではなく、ともに考えるプロセスの共有=考果が重要である。
    1776年に「コモンセンス」を書いたトマス-ペインは、ワシントン、ジェファーソンなどが議論する大陸会議で、小さなイギリスがアメリカを支配することがおかしいと問題提起している。数値ではなく、論理でおかしいと議論し、フランス革命の意味をコモンセンスとしてアメリカに伝え、議論を起こした。
 インフラの価値を所与と考え、共有できない国民に、数値では示しえないコモンセンスを議論することが重要ではないか。数値計測しやすい一部だけを取り上げるだけのストック効果とは異る説明は重要だ。インフラに対するコモンセンスの呼び起こし、議論する。ストック効果とならんで重要なのは、生活者とともに考える「ストック考果」ではないか。三便益のみならず、「ストック考果」のコモンセンスを議論することこそが、今、求められているのではないだろうか。

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2016年9月20日 (火)

宮本常一、酒と歩み寄り、篤農家、そしてバラバラに出稼ぎ

宮本常一に酒に関した文章がある。「異民族が少なかったから、日本人は自分で喋れない、酒の力を借りる。落語・講談の環実に語らせる。だから、会議や討論をしない。異なる意見の歩み寄りが大事だった(宮本常一著作集15『日本を思う』154)」
 良いかどうかは別として、理詰めだけでは日本の社会は動かない。納得いって、歩み寄ることが大切だった。その歩みよりは篤農家がリードしたと、宮本は考えていたようだ。
 篤農家は技術者であり経営指導者であり、教育者であり、郷党のなかにあった。しかし、S23の農業改良助成法による農業改良普及員になると、経営ができず、篤農家は沈黙した。補助金がで人々を誘った。こうして、自分で考える自主性、支えあう力を失った。(宮本常一著作集15『日本を思う』245)
 このようにして、歩み寄るリーダーを、日本の村は失い、バラバラと出稼ぎするようになる。その様子を、宮本は「出稼ぎ貧乏」として記述している。
 岡山県奈義は名神高速(の工事)に600人出た。(工事出稼ぎによって)夫婦別居となる。すると、飲酒、博打、女の味が出る。役場近くの30戸のうち7軒が飲み屋である。出稼ぎに行くほど貧しくなる。
 食管法で(農家が)管理され、35年頃から、最初、鶏肉の買占めがあり、次に豚肉。S44年から自主流通米が入ると、コメも三井、三菱が酒米を買いあさる。伊藤忠は米菓用もち米、丸紅飯田は、米菓・ビール用屑米を買いあさる。挙句、海外との競争。独立独歩、村の自主性などあろうはずがない。(宮本常一著作集15『日本を思う』271-272)
と、宮本は書いている。
 徳島県阿波市の山中でも、農家の老人から、同様の話を聞いた。
戦後に、それ乳牛だといって、補助金でサイロを建てたが、酪農では食べていけなかった。今度はバイオマスだという。施設は作ったがうまくいっていない。結局、子どもは麓におりて、会社勤めをしている。

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2016年8月 9日 (火)

蟲明先生にお話を伺う(解釈意訳)

住民主体に道路計画全体を投げてしまうやり方は、妻籠や彦根の先例があった。彦根のキャッスルロードの計画が紛糾したとき、あるプランナーが「そこまで住民がいうなら、何も決めず、白から住民がやったらよい」と住民主体に計画を掘り投げたそうです。住民は「そんなこと言われても」と困るが、「わしはプロや。知っている知識で支援する」としたそうです。
 それでも、住民は「市から計画づくりを受託してるんやから、お前の計画を押し付けてくるんやろ」とかんぐる。そんなとき蟲明先生は「市とは住民へのお手伝い契約や。想定図面なんかない」と言い切る。
 とはいえ、契約は「
課題設定、整備方針、計画、住民参加研究会」となっているが、 必要に応じて住民参加研究会を充実させることができるようになっている。こんな柔軟な計画は随意契約でないと難しい。
 計画だけではなく事業でも、
行政は事業をするなと、蟲明先生は考えている。米国では公的土地を提供し民間で売り上げを上げてもらえれば、消費税だから、市の財政に貢献する。だから民間に任せられる。ところが日本は固定資産税だから、最初から儲からない物件でも、国の補助金でもあろうものなら公的投資してしまう。だから、行政が先に絵を画いてしまう。だから、住民の前に出すともめる。
 こうしたなか、住民主体に任せ、行政用語を通訳できる、制約条件を通訳できる、いわば介護保険のケアマネージャーのような役割が大切。実際のまちづくりには、交通も植物も経済も、多様な知識が必要となる。
 住民を賢くするために、多様な専門家に問いをたてる、もし自分がわかっていても問いをたてるコーディネータが大切だ。なかでも、本当の専門家は行政マンだ。行政に問いをたてることが重要だ。
 マンションでは修繕積立金、共益費で一緒に考えねばならんことが多々ある。マンションこそ、住民主体で管理をやったらやったら良い。

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2016年8月 7日 (日)

住民主体と民間主導 蟲明眞一郎

ひきつづき蟲明眞一郎先生の講座から。 

「平成23年度の『地方財政白書』によると、普通建設事業費のうち都市計画費すなわち街づくり事業費は、平成11年から平成21年までの10年間で4割以上減少」している。「都市計画事業では土地費用はちょうど1/3」になるので、1999年にPFI法が制定されてから、「特定目的会社(SPC)というものを設立し、それが資産を買い取り、その証券を小口化して、一般から資金を集めるという手法」がひろがった。この肝は、「民間企業に自由に考えてもらえれば、組合せとアイデアによっては事業費に倍以上の開きが出ることもあり得る。そういう提案募集をすること」なのだが、役所のなかには持ち出し予算がいらないからと、仕様書を決め込んだ奇妙なPFIもある。「資金だけなら、PFIより市債の方が利息がずっと安い」と蟲明先生は憤る。 

 さて、こうなると「住民主体と民間主導をどのように調整するかが課題になる・・・今回、エリアマネジメントの制度を考えてみて、これからの街づくりでは、住民が、それらを専門家や民間にどれだけ委ねられるかが成否の分かれ目になる」と述べておられます。 

 そのひとつの答えが、神戸フルーツフラワーパーク大沢だと私は思っている。神戸市が定期借地を設定し、地元の3社が連携企業を作り、プロポーザルで受託し、自分たちの資金で道の駅を作っています。付近は休日にはクルマの渋滞が多いので、隣接するアウトレットと道の駅を、村の共有地を通って結ぶコミュニティバスを計画しています。この収益で、平日は地域の福祉、生活利便の運行をしようとしている。
 行政の自己資金で建設するだけではない時代になった。行政の土地を、住民の主体を活かした起業に上手に運営してもらうことが重要なのかもしれない。
枚方のTサイトは、蔦屋のすばらしいデザインの文化サービスセンターである。枚方出身のオーナーの想いがこめられており、程度の深度はともかく、これも一つの住民の主体の表現かもしれない。常識を打ち破る発想が専門家、住民にできないときは、脱常識の一部の住民・賛同者が、事業展開するのも、新しい住民主体かもしれない。

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住民主体のまちづくり 蟲明眞一郎

昨日、研究会で蟲明眞一郎先生のお話を伺い、感動した。
 
蟲明先生は、街づくり(都市整備を蟲明はそうよぶ、たとえば)「道路整備の話になると、必ずと言ってよいほど地元で反対運動が起る」「このため、行政は、住民参加で道路計画がまとまるはずがないと考えます。/私は、こうした相談を受けた場合、必ず、『住民参加』ではなく『住民主体』で行うことを薦めています。ここでいう住民主体とは、会議自体を、座長も含めて全て住民で運営してもらうという意味です。…白紙だと、制約条件の一つ一つを皆で考え、各々が納得の上で段階を踏んで行くことができます。つまり、収拾がつかなくなることもなく、とんでもない案がまとまるということもありません」と言い切られました。腹案などないのです。住民が、地域のことを主体的に考え、制約条件を教えてもらいながら、現実的に考えていくから、短時間でまとまるとのこと。
 
さらに、「道路計画の場合、道路用地にかかる人とかからない人、道路から近い人と遠い人、といった利害対立が生じることの方が、収拾がつかなくなる大きな要因だという反論があろうかと思います。これに対しては、だからこそ、そういう人たちが一緒になって考える住民主体の進め方が適している」といいます。用地買収に伴う移転なども「実際、地域の人が、用地にかかる人の説得にあたられ、また、行政に対しては住民側に立って相談にのっておられるのを間近に見たことがあります」といい、そのプロセスを共有すれば「こうして、住民の理解が進んで行政との認識のズレが早く解消されると、時間は大幅に短縮される」と、その実績から断言されました。
 
住民対応の資料は、「見てわかる」要点をまとめた資料で良いので、そんなに時間はかからない。行政だけで検討する場合は「読んでわかる資料」なのでチェックに時間がかかると言い切ります。
 こ
うした住民主体の「検討の『場』づくりですが、私は、地域の誰もが参加できる『全体会』を検討主体に、これを『世話人会』が運営する仕組みをお勧めし」「コーディネーターを明確に位置付けることが最も重要」といわれました。
 
長い文章の腹案を出してくる役所、それに対抗する住民という構図をやめ、住民主体で考えさせ、第三者であるコーディネータが資料を用意したり、法規や補助制度の仕組み、議論の整理方法をアドバイスするにとどめるようです。まとまらなければ、撤退するそうです。
 
これに対して、多くの人が出入する駅前広場整備は、便利なところに住んでいる人に移動を強いるわけだから難しい。「駅前広場の用地にかかる人達には、『鉄道という貴重な公共交通機関を、駅周辺の人達だけでなく、出来るだけ多くの人達が利用できるように、ご協力ください』とお願いするしかありません。もちろん、こうした説明でも移転させられる人達の理不尽さは解消できないでしょうが、少なくとも、行政や一般市民が『無理なお願いをしている』ことを認識できるという意義はあります。どこかへ移転してもらうのではなく、便利になったその街に住んでもらうのが筋というものです。それには、新たな道路や駅前広場に面する人や空き地の所有者、そして移転する人が、ともに街づくりに対して夢を持つことが不可欠です」とコーディネータとしての哲学・矜持を述べている。
 
蟲明先生は道路などの都市施設と、都市整備などの街並みづくりは異なるという。「都市施設を対象とする街づくりでは、制約条件を一つ一つ理解していけば専門家でも住民でも同じような結論に至る」。しかし「街並みづくりには制約条件が無い」「街並みづくりの制約条件といえば、直接的には用途地域や建ぺい率、容積率や高さ制限など各種の建築規制が考えられますが、街並みを住居系とするのか商業系とするのか、住居は戸建なのか集合なのか、商業なら商店なのか商業ビルなのか、集合住宅や商業ビルの高さは低層か高層か、それによっては規制を変えなければなりません。つまり、建築規制に基づいて街並みを考えるのではなく、どんな街並みにするかによって建築規制を変えるのですから、結局、街並みづくりに制約条件はない」と言います。だから、「住民自身の常識に頼らず、積極的に専門家の助けを仰ぐことが重要となります。しかも、相当頑固な思い込みを解きほぐさねばなりませんから、専門家を先生に一から学習する時間が必要です」と述べている。
 
つまり、「道路など都市施設の街づくりは、必要なアドバイスができるコーディネータが必要」だ。しかし「建物づくりなど街並みづくりには、どんな街並みにするかによって建築規制を変えるのですから、結局、街並みづくりに制約条件は」なく「専門のデザイナーに学び(デザインコードや)自己の常識をくつがえす学習が、住民に求められる」というのです。住民主体における対土木と対建築の違いを、明確に述べられている。
 こうした対土木における制約条件提示、対建築における固定概念打破のデザイン提示、専門家は「住民主体」の必須としりました。
 しかし、そこまで住民が考えるようにもっていけるように、問いを発し、じっくり聞くことのできる専門技術者がどこまでいるか、疑問です。むしろ、多くの専門技術者と住民の間で、行政の言葉、技術者の言葉を翻訳し、問いを発し、議論を聞く、コミュニケーションデザインの専門家が必要かもしれないと、思いつつあります。

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2016年7月29日 (金)

PFIの意味 住民主体と民間投資(地元企業) 蟲明眞一郎

ひきつづき蟲明眞一郎先生の講座から。

 

「平成23年度の『地方財政白書』によると、普通建設事業費のうち都市計画費すなわち街づくり事業費は、平成11年から平成21年までの10年間で4割以上減少」している。「都市計画事業では土地費用はちょうど1/3」になるので、1999年にPFI法が制定から、「特定目的会社(SPC)というものを設立し、それが資産を買い取り、その証券を小口化して、一般から資金を集めるという手法」がひろがった。この肝は、「民間企業に自由に考えてもらえれば、組合せとアイデアによっては事業費に倍以上の開きが出ることもあり得る。そういう提案募集をすること」なのだが、持ち出し予算がいらないからという仕様書を決め込んだ奇妙なPFIもある。「資金だけなら、PFIより市債の方が利息がずっと安い」と、蟲明先生は憤る。

 

 さて、こうなると「住民主体と民間主導をどのように調整するかが課題になると言いました。今回、エリアマネジメントの制度を考えてみて、これからの街づくりでは、住民が、それらを専門家や民間にどれだけ委ねられるかが成否の分かれ目になる」と述べておられます。

 

 そのひとつの答えが、神戸フルーツフラワーパーク大沢である。神戸市が定期借地を設定し、地元の3社が連携企業を作り、プロポーザルで受託し、自分たちの資金で道の駅を作っています。付近はクルマの渋滞が多いので、隣接するアウトレットと道の駅を、村の共有地を通って結ぶコミュニティバスを計画しています。この収益で、平日は地域の福祉、生活利便の運行をしようとしている。

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2015年11月 5日 (木)

「都市」の発見・「民俗学」の発見(昔の論文)が土木の参考になる。UP

インフラのストック効果の議論をしていると、数値で示せるものとは別に、物語で示さねば納得できないものもあることに気づいた。未生以前の地域の語りと未来を考えると、昔、書いた民俗学の論文が役立つ。2009年にUPしました。

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2015年9月29日 (火)

T市クルマに頼りすぎないまちづくり の流れ

【きっかけ】
  2014年2月24日、森栗は「暮らしを変える新しい交通網」(国主催)を講演した。事前に、資料館で歴史的心情「こんな渋滞だらけで良いのか」を伺い、クルマ中心の交通事情を視察し、その写真を取り込んで対策案を具体的に講演し、大きな反響を生んだ。事後、バス協会、各市役所などを訪問、意見交換した。しかし、知事選挙前でもあり、講演が施策展開に影響することはなかった。
  この講演を聴いたO県自治体職員政策研修の企画者は、地域交通計画の研修を企画、2015年冬、県外視察地の下見の折、大阪に立ち寄り、長期研修計画を森栗に相談し、コーディネートを依頼する。
 自治体職員研修受講25名の6月名古屋視察に森栗は同行し「ガイドウェーバスに感心するのではなく、課題を認識し、専用レーン・一般者車排除警告付、公共交通優先信号感知装置の有効性」を指摘し、議論を起こした。
 8月研修では、県交通政策の方向性と研修生の25自治体における対応の具体(仮案)を提示した。9月では、前日にT市職員研修を平行実施し、T市への話題提供内容と議論、来期のT市のクルマに頼らないまちづくり方向内定を報告した。
【9月24日 T市職員研修】
  T市からの研修生Hは、通常業務以上の夢のある視点に感動し、T市職員研修を発案、市長公約を前進させる手段を模索していた中間管理職らが研修を企画した。
    森栗は「T市マスタープランと交通」と題して、マスタープランに書かれている緑、健康、安全を具体化する手法、健康コフォート統計、交通事故リスクなどを示し、片側二車線拡幅した道のバス専用レーン化、鉄道駅までの渋滞しないフィーダ、歩きたくなる観光を提案し、皆で議論した。
 ワークショップでは、職員・市民の意識改革を説く議論に対して、森栗は「意識は変わりにくい」という本音をぶつけ、「意識(卵)より鶏が先だ。まずは制度・整備が先」と、責任を個人に押し付けるのではなく、施策すべき方向を示した。⇒形式論を越えさせるファシリテート
これで固さが抜けて自由な議論となる
  ・クルマに乗りたくて乗っているわけではない、移動手段がないからだ
  ・個人で歩いたり、公共交通通勤の職員もいる。歩きや公共交通は、多々、発見がある
  ・託児など、クルマに頼らねばならない個別事情も考慮せねばならない
などの意見を共有した。
【研修の結果】
         この結果を確認した市長は、以下を指示
町の目標を 「歩きたくなるT市」とする
具体:    市民・職員・ビジターが歩きたくなるハード・ソフト整備
①職員研修・ワークライフバランスと健康を意識した 通勤手当の見直し
②新たな公共交通システム導入可能性調査検討事業 で町の移動軸を検討する
③クルマに頼りすぎない観光連携事業 海の駅、LCCターミナル、スピリチュアル観光
         そのために森栗は、来年以降もT市に入る。
目処は、   駐車場を有料化・駐車場量を制限した新庁舎建設の3年後
              以上が、8時間で一気に方向が決まった。

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2015年5月17日 (日)

条文比較分析からみる公共交通条例の含意

南総一郎『交通科学』第45巻2号、2015年、7-16頁。
 2013年交通政策基本法に前後して、7基礎自治体、1県で、公共交通条例が定められている。その整理をしている。
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 福岡市以外は、ほぼ総合交通計画と関わり、交通空白区地対策が目的とされ、交通事業者、自治体、市民の責務が記されている。奈良県を除いて、財政上の措置、交通協議会などが明記されている。
 条例により制度的担保をし、財務的位置ずけを明示していることは、評価できるが、誰がするのか、住民自主運行組織以外は、計画運営の主体が明示されていない。また、道路に関わる事項についても、一部、自転車以外の記述はない。
 1741基礎自治体のなかで7条例のみ、47都道府県中、奈良県しか、公共交通条例がない。 条例を定めビジョンと財務措置を明示しすることは、交通政策の基本ではないか。
 加えて、公共交通政策が、自転車・道路との関わりを視野に入れた総合交通政策でなければ、まちづくりとして展望がない。そもそも、そのビジョンを実現する運営体を明示することが、今後の課題であろう。

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2015年2月24日 (火)

二つのメディエーション【演習Ⅰ教材】

通学路安全や無電中化など地域の道路課題は、国道整備とネットワーク・連携してすすめていく必要がある。これからの国道事務所は、単なる国土軸としての国道維持管理整備のみならず、多様な国の支援制度を背景として、自治体を強力にサポートし国道地域の整備をする事務所になるべきだ。地域道路課題は、以下の事例に見られるように、自治体だけでは解決できない課題も多い。メディエータと自治体・住民の連携、それをサポートする国道事務所が必要だ。近畿地方整備局が、近畿地方の整備ではなく、近畿の地方整備であるのと同様に…
※地方のことは自治体に丸投げすれば問題解決できると素朴に考えるのは、現場を知らない机上論である。府県だけでは課題解決できない、県市が連携できない、基礎自治体間で連携できないなど、課題は多様にある。国は、国土を支える一つ一つの地域の自立的な地域づくりを、外部から強力にサポートする役割が、今、求められている。

■ 昨年夏、A市B区長・C課長とM教授が面談。M教授は、事故も多い狭い国道での通学路安全の課題を耳にして、C課長に国道事務所とも相談し議論の場を作るよう示唆した。M教授はD課員に国道事務所への電話を指示。D課員は、意味が理解できないままC課長と相談せず、国道事務所に電話する(言われたからとりあえず電話した)。国道事務所に、B区長の課題解決の熱意が伝わらず、区長の通学路安全解決の決意は3ヶ月間、放置された。
反省:国道事務所・C課長間の議論を仲介、立会いせねばならないところを、D課員に安易にメール指示したM教授(メディエータ)の安易さが原因
 11月、事態が進展しないことを危惧したM教授は、市役所区政支援室E課長に状況整理を依頼し、初めてDがC課長に相談しておらず、またB区長も事後のフォローをしておらず、膠着していたことが判明。判明後、はじめてC課長が国道事務所に電話連絡したが、課長は問題解決の困難を想定し、後ろ向きの連絡となった。結果、区長の問題解決の意思が、さらに3ヶ月放置された。
※区役所からみれば、28条2項で国道裏道整備が可能とMから聞いていたのに、国道事務所から整備にはA市の半分負担が前提といわれ、かつ28条2項の用件は□と◇、○、△、▽ですよと、用件定義を限定した法定協議会を求められたと考え、議論の場の設定に迷ってしまった。
 翌年2月、事態の膠着を危惧したMが、再度、市役所区政支援室E課長を通じてC課長に国道事務所も含めて問題解決の議論の場を設けるよう指示し、2月末、M教授がB区長と面談することを申し入れた。するとC課長、突然、国道事務所に行き、「国道拡幅は難しいし、予算もないし、現場議論に入って課題解決できなかったときの住民反発が怖い」と、動けない理由を並べ立てた。
反省:Mが国道事務所と区役所の協議に立会いメディエーション(通訳)すべきだった。メディエーションがなければ、相互のハード整備の「立場」「制度」の応酬になり、すすまない。子どもの安全という「利益」を第一に議論し、ゾーン30、裏道安全着色など、できることをすすめる。議論の必要に応じて、ハードも検討すべき段階で、メディエータが28条2項法定会議ですすめることもありえる。ステークホルダー相互が直接議論すれば、立場のぶつかり合いになって、前にすすまなくなる。
 2月末、Mは再度B区長C課長と会い、
「拡幅など難しいハード整備を前提とするのではなく、裏道安全などソフト整備の手もあるので、子ども安全を守るという利益に集中し、現場で多様なステークホルダーが議論することが大切である」
「確かに、現地には過去のハード事業のしこりもあり難しいが、住民反発は、実現しないことに対してではなく、今回のようなコミュニケーションレスにあるのではないか。住民はそれほどバカではない」と説いた。
※ 「Mの説明不足がコミュニケーションレスの原因でありMは反省している」
「100%解決を求め、できないと一人合点し、何もしないのではなく、多様なステークホルダーが集まり、少しでもできることを検討することから、始めよう」
「国道事務所もオブザーバーにして、一緒に議論しよう。そのメディエータをMがしようと申し出ている」
ことを、説明した。
国道事務所にも、法定協議会や既存の枠組みを提示するのではなく、ソフトくらいなら現場で話し合う中で臨機応変な対応ができることもあり、そこからハード整備もありえるので、連絡を密にすることからすすめるように期待したい
 
 以後、M教授が現地に入り、住民にヒアリングし、通学路安全の方策を国道事務所をオブザーバーに議論する。地元の議論の必要に応じて、A市建設局、B区役所が連携して整備をすすめるであろう。国道事務所とも情報共有し、国道事務所は必要に応じて、強力にサポートするであろう。
 半年の区役所内コミュニケーションレスを解きほぐし、2月末、やっと現場コミュニケーションが始まる。

■一方、2月、MはF区G課長との面談で、無電柱化を含めた住環境整備地区指定が住民議論にのぼっているH地区を紹介され、その問題解決の合意形成にあたる意思を表明した。Mは市役所E課長を通じ、住環境整備課長と面談(E課長立会い)。住環境整備課長は、
 ・H地区が住民合意をもってすすめようとしている状況
 ・他地域でも合意形成ができず無電柱化が頓挫したこと
をMに説明。
 ・その場合、道路の建設部局との連携が重要と示唆される。
 E課長はこの状況をF区に報告し、2月末日にMはF区長・副区長に「大学の住民合意のインターン教材として、H地区に入りたいので協力を依頼する」ことで面談する(E課長立会い)。
 役所間コミュニケーションの状況を察知したF区G課長は、A市総合まちづくり支援制度を使って、MにH地区ヒアリングの機会を与える。
 ※A市総合まちづくり支援制度:課題をヒアリングし、複数メディエータがチームを組んで、複数回にわたってメディエータを住民活動団体に派遣する支援制度。 
 ヒアリングでは(区政支援室、F区役所立会い)、住民幹部30人はやる気があるが、
 ①マンション等多くの住民への広がりがない。幹部は議論を多くの人に広げる必要性を理解できていなかった。
   ※ 話し合うなかで、M教授は10年たつと、活動メンバーの平均年齢は10上がると指摘し、広がりの必要性を指摘した。観光客の入れ込みをめざした住環境整備ではなく、多様な住民が誇りに思える住環境整備であるべきで、そんな素晴らしい街に外来客が来る。
 ②H地区住民は、住環境整備の想いはあるが、現実に何をどこまで議論して良いか理解できていない。サポーターもいない。
 ③イベント等のあり方について住環境整備などの目標設定ができていない。何となくイベント・・・
という状況を、Mは把握する。
 M教授は市の総合まちづくり支援制度を使い、
  ①多様な住民への広聴 を、F区中間支援団体のIさんに依頼する
  ③住環境整備にあわせたイベント を、元F区の中間支援団体職員J(今は別の区の中間支援勤務:住民の顔なじみ)に依頼する
  ②住環境整備の具体案 はMがメディエーションする
以上を、A市総合まちづくり支援制度ですすめることを表明する。
 Mは、I、Jとメディエーションチームを3月につくり、住民幹部との議論の場を設け、分担と課題解決方向、短期工程を協議する。
 その議論に基づき、3-4月に、
  ① Iは幹部以外への広報・広聴につとめ、
  ③ Jは幹部とともに住環境整備に則したイベントを検討し
  ② Mは、住民の住環境整備の意向、事業の活用方法を議論し、方向性と課題整理をする。
 M教授は住民議論のメディエーションをし、住環境整備の方向性と課題整理ができた5月頃、市役所E課長を通じて、F区役所、住環境整備課、建設局道路部局との協議の場を設け、対応を検討してもらう。国道事務所はこの状況を見守り、必要に応じて(三歩下がって)支援の方策を検討する。
 I、J、M教授と住民幹部は、区役所を交え、進行状況について意見交換する。5月以降、このプラットフォームに、新たな人材も加わり、国道事務所もオブザーバー参加し、A市の住環境整備、道路整備の対応も伝え、議論できるようにする。

F区では役所内コミュニケーションから住民メディエーションへ、わずか3ヶ月で動くであろう。そのなかで、国道事務所の必要なサポートも実現可能であろう。
B区は区役所内コミュニケーションがすすまず、6ヶ月たって、元の区役所議論からやり直すことになる。
【ここで質問です】   この場合、メディエータには、M以外に誰がいたでしょうか。
 


 
 

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