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2019年4月

2019年4月29日 (月)

「美しき村」pp243-252「豆の葉と太陽」(『柳田國男全集』第12巻)

■それよりも私に先ず珍らしかったのは、 何の模倣も申し合せも無い筈の、数十里を隔てた二つの土地で、 どうして又是ほども構造が似ているのか、 尋ねても答えられそうな人が居ないから聴かずに戻って来たが、 久しく不審のままで忘れずに居たのである。p243
■しかも風景は我々が心づくと否とに拘らず、 絶えず僅かづつは変って行こうとして居る。 大よそ人間の力に由って成るもので、 是ほど定まった形を留め難いものも他には無いと思うが、 更にはかないことには是を歴史のように、 語り継ぐ道がまだ備わって居ないのである。pp244-5   ⇒自己相似性によるスケールフリー構造だから当然だ
自己相似性による
コッホ曲線19 フラクタル18
■しかし旅行をして居るうちには、 別にここという中心も無いような、 村の風景に出逢うことが段々に多くなる。 ………斯ういう茫として取留めの無い美しさが、 仮に昔のままで無いとわかって居ても、 之を作り上げた村の人々の素朴な一致、 たとえば広々した庭の上の子供の遊びのような、 おのづからの調和が窺われて、 この上も無くゆかしいのである。p245 ⇒カオス力学におけるフラクタルを考えれば 当然
■そうすると古い親しみを忘れず、 甲の家でも乙の家でも、 片隅に芽生えたものだけはそっとして、 其成長を見守って居たのが、 やがてはそれぞれに程よい配置に就いて、 斯うした珍しい村の相貌を、 形づくることにもなったかと思われる。p246
■村は住む人のほんの僅かな気持ちから美しくもまづくもなるものだということを、考へるような機会が私には多かった。p246
■歳月と生活とが暗々裡に、我々の春の悦びを助けて居たのだということは、性急な改良論者のもう少し考えて見なければならぬ点であろう。p247   ⇒生活の臨機応変性、フィードバック性
■土地と樹木との因縁は、 我々などよりもずっと深く根強く、したがって又ゆっくりとして居る。p250   ⇒自然こそ、人の性急な手を及ぼさねば美しいものなんだ
■強いて風景の作者を求めるとすれば、 是を記念として朝に晩に眺めて居た代々の住民ということになるのではあるまいか。p250
■風景は果たして人間の力を以て、之を美しくできるものであらうかどうか。もしも可能とすればどの程度に、これを永遠のものとすることが許されるのか。
■次々去っては又来る未知の後生と、 それではどういう風に心を通わし、 思いを一つにすることが出来るかが問題なのである。p252
■ただ、大事なのは発願である。p252
■風景は果たして人間の力を以て、改良し美化することが出来るか否かである。天然は、持って生まれためいめいの顔のようなもので、人力を以て如何ともすべからざるものであるかどうかである。p344
金野幸雄「『美しき村』を計画する~兵庫県緑条例(丹波地域)の取り組みから~」2004年度第7回都市環境デザインセミナー記録

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酒井敏『京大的アホがなぜ必要なのか―カオスな世界の生存戦略』凸版印刷、2019年 スケールフリー 臨界状況

19世紀  ダーウィンが進化論を書くまでは 神が世界を作った

19-20世紀 「すべては因果律によって成り立ち、自然科学で未来予測が可能だ」=20世紀科学信仰

これを「ラプラスの悪魔」p29-32 とよぶ。            しかし、

1963年ローレンツ・アトラクター コンピュータによる完璧な天気予報は不可能という結論自然界はカオスだp40

1970年ロバート・メイ すべてのパラメーターを正確に決定できる単純なモデルにおいてすら、長期的な予測は不可能
   異なる電卓 (n2-2)ⅿ すべて異なる数値になる(極小少数第n位端数切り捨てが電卓によって異なるから)

【酒井仮説】社会全体は、自己相似のスケールフリー構造を持ち、ちょっとずつ異なって、大きく変わっちゃう臨海状況にあるという世界観 (カオス力学)

べき乗数(累乗数)が顔を出す現象はフィードバックがかかった状況だから、論理学的にはアブダクションが重要となる*類構造の発見

そして、自己組織化して臨界状況にいたる人間社会p200201

 ※複雑系ネットワークは、ランダム・混沌ではなく、スケールフリー性、スモールワールド性、クラスター性 すなわち構造をもっている

シェルビンスキーの正四面体=全辺の中間を結ぶと4つの正四面体ができる。これを繰り返すと、形はあるのに、積がない物体となる。      人間社会は、フラクタル構造なのである

【酒井の既知識批判】

これまでの世界観 ランダムモデル統計量に支配される

だから 限定的な 正しい原理 で構成し樹形モデル を描く

しかし、その前提に立って、決まったルールのもとの研究は、研究ではなくて作業であるp167

ランダムモデルは「死の状態」「烏合の衆」を前提としている →ランダムモデルの研究教育は、だからワクワクしない

そうではなくて

生物の進化とは、自己相似(コピー:遺伝)のなかでの差異(突然変異)=無目的試行錯誤の積み重ね p234 である。だから、小さな差異が、どんどん広がり、とんでもないガラクタ状況(臨界)になる

だが、ガラクタが集まり、ある程度の密度になる(臨界)と、一気につながる→おもろい。そんなとき、多様な遊び、毒を知っているアホが、臨機応変に対応して何とかしよる。

成功体験を得たアホは図に乗り、おもろそうな匂いがやみつきになり、さらなるアホ進化するp235

しかし、森栗のように、おもしろさに走り、毒を逆手にとって生きる方法は、実は非効率で、危険、失敗だらけ p163

論理的選択と集中の大学では、排除すべき対象 かも?

だが、

(臨機応変に意味もなく何でも結びつける)エンゲージメント経営が必要なとき
アホが対話の効用(雑談じゃない)によって、イノベーションをもたらす

20世紀科学信仰の偉い人から「対話してどないすんねん」と、どんなにアホにされても、アホが臨界状況の世界を救うんや。

 

 

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2019年4月23日 (火)

玉木妙憂『死に行く人の心に寄りそう』2019年、光文社

p6 救急車をよぶと 24時間以内になくなれば変死扱い、警察介入

p20-5468

Photo_1

黒田裕子さん「森栗さん、人は生まれたときのように、死んでいくのよ」

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