米盛裕二「アブダクション」勁草書房、2007
現代の論理学は論理の数字化によって大きな発展を遂げ、それはまさに二十世紀の知的革命の一つといえるでしょう。しかし論理学者たちの関心はもっぱら論理の数字化にのみ向けられてきたために、論理学はますます現実の人間の思考の論理から離れてしまって p.ⅳ
しかし、人工知能研究者たちは「厳密な推論」だけでなく、「厳密でない推論」も重視していて、とりわけ人間の創造力に関心を持つ人工知能論者たちはむしろ「厳密でない推論」に人間の推論の特質を見い出そうとしている p.ⅴ
アブダクションは 発見法的論理学 heuristic logic p.8
アブダクションの別名 retroduction 遡及推論 結果から推論 p43
⇒ケプラーの発見、森栗の共創対話法
「明確には言えないが、後から考えると、そういえば□□□だった」
驚くべき事実の観察→説明仮説explanatory hypothesis p53⁻54
もっともらしさplausibilityが重要p56
驚くためには 洞察力(閃き) と想像力が必要 p58 ☚熟慮
仮説説明のためには 驚きと問が必要 p59
そして意識的に熟慮して行われる推論reasoningして仮説 p61
アブダクションを認めず、推論の形式的妥当性のみを偏重するのは、現実の人間の科学的思考や推論(発見や発明)を取り扱うのに適していない p64
アブダクションは、試行錯誤的 自己修正的 熟慮 論理的に統制された推論 p68
自己修正的p65⇒内省p124
機能的飛躍inductive leap⇒事実を求め一般化
仮説的飛躍abductive leap⇒理論を求め創造的 p92、110
仮説のテスト 条件
・もっともらしさplausibility
・検証可能性 verifiabirity …偽の場合反証可能なもの
・単純性
・経済性 費用・時間なく検証できる p71-72
アブダクションは直接観察したもの(弱い推論)とは違う種類の何者かを推論する。観察不可能な何ものかを仮定する p87
通常の仮説演繹法 は ちゃんと仮設しているか?
バートランド・ラッセルの帰納法批判 仮説の提案なしに帰納法を用いることはできない
帰納法で厳密に事実を並べても仮説は出せないP130
J.S.ミルは「帰納法は『経験からの一般化』generalization from experienceによって自然の因果法則を探求する『実験的探査の方法』」と定義した。p145 しかし、帰納法を使うには仮説がなければ一致も差異発見もその要素を引き出すことさえできない。 P146⁻153
結局 帰納法は実験と観察にもとづく客観的で実証的な方法です。…(そのあまり)…科学的方法において仮説を用いることに対して懐疑的で、科学探求における仮説の積極的な意義と役割を認めようとしない(という欠陥がある) p154
事実を集めること自体が仮説ではないか。アプリオリに社会のすべてを並べることは、不可能である。
帰納法の「事実をして語らしめよ」は、事実が自ら語るのではなく、いわば研究者が事実に語らしめるのです。…N・R・ハンソンは「仮説が事実をつくる」とさえいっています。p160
ニュートンは「私は仮説をつくらないhypotheses non fingo」と言いつつ、引力のように観察不可能な対象に関する仮説なしに、万有引力の法則は発見できない。ニュートンは「仮説的方法hypothetical method」を用いている。p164-165
アブダクションは仮説を発案し発見の見通しを立てる拡張的推論であり☛観察から洞察し創造する飛躍
機能はアブダクションによって提案された仮説をテストし正当化する拡張的推論☞部分から全体への一般化飛躍p181⁻182
探求は科学のみならずにもある。デューイは、(日常的経験と生活の場、常識環境の相互作用の状況)を常識的探求comon sence inquiryというが、「常識」という言葉は誤解を招く。森栗はこれを生活探求とよぶ。科学的探究が知識そのものを目的にするのに対して、生活探求は使用と享受のために生ずる。p237 それは質的である。p241
これをデューイは直接知acquaintance knowledge 実践知pratical knowledge 質的知qualitative thought と表現する p242
デューイが言うように、科学的真理も「意味の一類」にすぎない。
意味は真理より貴重であり、その範囲も真理よりいっそう広い。そして、哲学は真理よりも意味に関わる
科学的真理が 結果の検証可能性を本質とするのに対して
常識(実践知)は直接的現実的応用に関して決定される意味 pp246-247
デューイは常識 というが
直接知acqaintance knowledge、実践知practical knowledge、質的思想qualitative thought
そういう類の場situatinが存在し p242 ➡「生活知」と森栗は表現する
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