場の論理とマネジメント と物語記述
伊丹敬之『場の論理とマネジメント』東洋経済新報社、2010年
マネジメントの改革というと、組織や経営・場所の構造に解決策を求めたくなるが、本当は、わかりにくいディテールのプロセスこそ重要である(pp266-269)。
場:人びとが参加し、相互観察、コミュニケーションにより、情報の共有蓄積と心理的エネルギーのプロセスを生む枠組み。それは、外部指令無しに自己組織的に展開する(p31、42)
場の舵取りの経営的働きかけpp240-243
舵取りのステップ 基本の経営行動
1 かき回す(ゆらぎを与える) 刺激
2 切れ端を拾い上げる 刺激と方向づけ
3 道をつける 方向づけ
4 流れをつける 方向づけと束ね
5 (仮)留めを打つ 束ね
場のプロセスマネジメントのための舵取りの基本ステップ(pp240-243、修正)これがうまくいくと、情報の共有蓄積と心理的共振(連帯感)のみならず、解釈コードの共有化がなされる(p271、296)。
事業の評価は、投資効果のような定量的なもののみではない。人びとの愛着とかやりがいなどは、アンケートの満速度で、無理やり説得しようとすることも少なくない。しかし、満足度は、結局、100%に近いものになり、評価事体の正当性が怪しい。むしろ、定性的な評価、たとえば誰もが、そうだろうな、なるほどと納得する物語記述が、評価として必要なこともある。
こうした物語記述は、一種の間接コミュニケーションの時間差の場を提供しているともいえる。物語記述は直接のコミュニケーションではなく、コミュニケーションのための素材を提示するのであるから、その物語を読んだだけで、なるほどと心を動かされる(刺激と方向づけ)、言葉の「切れ端」が必要である。さらには、その言葉の切れ端から、どのようなコミュニケーションが期待されるかを示した、結論ではないが、一定の流れをつけておくことは重要である。
たとえば、客観的な記述ではなく、顔の見える個人が発する、生活感覚から「言葉」の断片を拾ってくることが物語では重要なのだ。客観的な記述ではなく、かといって留めを打つ結論でもなく、物語記述者が物語とのコミュニケーションを示した「こんなことを感じた」「ここに気づいた」などの、流れを示すことも、物語記述では重要である。
| 固定リンク
最近のコメント