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2017年7月11日 (火)

川端祐一郎他「コミュニケーション形式としての物語に関する研究の系譜と公共政策におけるその活用可能性」

川端祐一郎、藤井聡(2014)、コミュニケーション形式としての物語に関する研究の系譜と公共政策におけるその活用可能性、土木学会論文集D3(土木計画学),vol.70,No.5(土木計画学研究・論文集第31),p.p.I_123-142

 川端祐一郎は物語研究で博士(工学)を取得した。彼の「コミュニケーション形式としての物語に関する研究・・・」は、ナラティブアプローチがほとんど科学的基盤を持っていない(野口裕二(編)ナラティブ・アプローチ、勁草書房、2009)なかで、学ぶことの多い労作である。

 川端は、物語を「出来事を、意味に満ちたやり方で結びつける明確な時系列を持ち、一定の聴き手に対して、世界の存在や人々の経験についての洞察を提示するような言説」と定義している。川端は物語を時系列に則して存在や経験への洞察を与えるものというが、森栗は「実践政策学のためのエピソード記述の方法序論」(『実践政策学』№1、2017年:投稿中)で、エピソード(物語)記述には、歴史的背景のみならず、世界の存在や人々の経験の背後にある地理的背景、民俗的(生活的)背景を切り分けて記述することを求めている。
 川端は、物語の必要性について、①市民了解 ②イマジネーションを増幅 ③相互理解 ④語り直し(イデオロギーの脱構築)とまとめている。物語はイマジネーションを増幅させる(②)から相互理解()が可能で、異なる価値観を語り直す(④)ことで、より深い市民了解に展開できる(①)。物語は問題の所在を暗示し、理解を深め、多様な解釈をメタ物語(Roe)として語り直され、それが市民合意につながる。そこに物語の意義があるのだという。
 ブルーナーは、論理科学モードの「議論」が真実性を求め、結果として説得を試みようとするのに対して、物語モードのストーリーは、迫真性、真実味による了解(納得)を求めるという。政策において、食品安全、医薬品、地球環境などではリスクに対する真実性が重要であり論理科学モードが政策に有効である。しかし、インフラ整備、教育、医療介護など生活、地域に近い政策では、ベネフィットに対する迫真性、真実味が重要で、「何のために生きるんや」「愛着心」といった物語モードが政策的了解(納得)を生む(有本建男、科学的助言とは何か、SciREXQuarterly,05june,2017)
しかしながら、現象学的分析(経験の質を問うこと)は、経験を「反省」することによってなされる(貫成人『経験の構造―フッサール現象学の全体像』勁草書房、2003年、p.227)。川端の物語研究では方法としての「反省」が明確でない。調査者の科学としての反省(民俗学では内省という)をどのように記述するのかについては、森栗が「実践政策学のためのエピソード記述の方法序論」に仮説と試みを提示している。

 物語分析の方法としては、間主観性あるいは相互主観性のなかにある構造、「確信成立」の条件を確かめることである。そのためには物語の筋(プロット)を確かめ、経験の組織化をして意味を問う。物語の隠喩も、類を示すことである。これは、フッサールの経験の構造からエヴィデンスを取り出そうとすることとも共通する(森栗、前掲)。

視点取得(前掲では構造観取と表現)による「物語と共感」については、(西山雄大、加藤君子、川嵜圭祐、長谷川功:視点取得と中心性の協働、人工知能学会全国大会論文集27th,2013)に詳しい。 

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