ストック効果と社会的共通資本に対するコモンセンス
宇沢弘文は社会的共有資本とは 自然、制度、インフラ の三要素からなると指摘し、それを認識するコモンセンス を説いている(宇沢「社会的共通資本 の論理 」)。 「社会的共通資本 の論理」では、自然破壊としての水俣病、温暖化。制度資本(教育、医療、金融)。自動車の社会的費用や都市など複合インフラ。この3つの課題が論じられている。自然や制度、都市を社会的共通資本として守ることを説いている。
一方で、高速道路などに関して、その建設の効果を、計測できる効果(時間短縮、経費削減、事故減少)の三便益のみで計上することが通常である。しかし、効果の数値計測しやすい一部だけを取り上げて評価するだけでは、複合的な自動車の社会的費用を自動車が十分に支払っていないのではないかという宇沢の疑問には答えられていない。また、国民も納得していない。ストック効果をどう表現するかは、今日の道路政策の大きな課題である。
自動車の社会的費用のように、インフラのマイナス効用を議論することも重要であるが、一方で、我々は既存インフラを所与として考え、社会的共有資本として正当な評価を忘れがちでもある。インフラは、誰かが勝手に用意するものであって、良き点については所与(当然)として意識しない傾向がある。
計測できない社会的共通資本に対するコモンセンスを発見することも、一方で重要ではないか。複合体である地域生活全体を素手でまさぐるようなコモンセンスの考果が重要だ。高速道路のストック「効果」ではなく、ともに考えるプロセスの共有=考果が重要である。
1776年に「コモンセンス」を書いたトマス-ペインは、ワシントン、ジェファーソンなどが議論する大陸会議で、小さなイギリスがアメリカを支配することがおかしいと問題提起している。数値ではなく、論理でおかしいと議論し、フランス革命の意味をコモンセンスとしてアメリカに伝え、議論を起こした。
インフラの価値を所与と考え、共有できない国民に、数値では示しえないコモンセンスを議論することが重要ではないか。数値計測しやすい一部だけを取り上げるだけのストック効果とは異る説明は重要だ。インフラに対するコモンセンスの呼び起こし、議論する。ストック効果とならんで重要なのは、生活者とともに考える「ストック考果」ではないか。三便益のみならず、「ストック考果」のコモンセンスを議論することこそが、今、求められているのではないだろうか。
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