« 宮本常一、酒と歩み寄り、篤農家、そしてバラバラに出稼ぎ | トップページ | ストック効果と社会的共通資本に対するコモンセンス »

2016年9月22日 (木)

ボランタリー経済、自発する公共圏、信頼と創発、ブリコラージュ、会所、結、講、座、連、わらしべ長者、鉢をまわす、持ち寄り・持ち前,つながるカフェ,ボランタリー経済の誕生,

1 ボランタリー経済の登場
■まちづくりには、「まちの魅力発見・発信」という、楽しめながら取り組める要素と、「合意形成」「利害調節」というゴリゴリ進めていかなければいけない要素とがあります(山納2016、P62)。都市計画の個別計画(ここでは、街づくりとよぶ)は後者であろうが、ソフト事業や経済の創発(ここでは、まちづくりとよぶ)は前者であり、ここでは前者を対象とする。
■「持ち寄り」
伝統的コミュニティでは、情報の独占・秘匿ではなく「持ち寄り」があり、個人の「持ち前」が村中で共有された。近代は、組織による知識の収奪・秘匿による、利己的利益最大化をめざし、こうした弱いシステムを壊した。しかし、現代のネットワーク社会では、知識のシェアウェア(「持ち寄り」)が発達し(金子他1998、p.p.10-11)、そこにイノベーションの可能性がある。
シェアウェア経済は「継続的な関係を保つに値する相手を選別する仕組み」「つながり」の継続で経済を成立させる仕組みである(金子他1998、p.p.50-53)。
■パートナーシップの登場
人間の行動には、
①利己的行動(市場経済システムの適者生存にもとづく)
②利他的行動(ゲーム理論の相互作用や協力関係にみられるような)
がある。生物進化では、多様性を維持するのは、①利己性、②「相互利益関係」(相互編集・共生)の双方は二律背反しない。そうした多様性のなかでパートナーシップによる進化がおこる(金子他1998、p.p.166-178)。
 対話とは違い、ズレ、ゆれを認識し、相手のみならず自己に問いかける、相互の間を埋める編集作業である(金子他1998、p.p.377)。コミュニケーションによる編集の結果、パートナーシップが生まれる。
■経済システムを動かしているもの
市場経済は複雑骨折し、市場の失敗を忌避する福祉国家論と、国家の失敗を避けたい小さな政府論との間で右往左往している(金子他1998、p.p.8-12)。だから、かつてほど経済予測は信頼されていない。
経済システムを動かしているのは、包括的な知識とか統計的に集計された(著者補足:近代の)大きな知識(による市場経済システム)ではなく、社会のさまざまな場面に従事している個々人が、それぞれ不完全なままに、お互いに矛盾するものとして分散的にもっている小さな知識である(山納2016、p172)。大きな知識は、組織や行政の威信による信用に担保されているが、今や、その維持は難しい。分散的にもっている小さな知識は、連携による信頼でなりたっている(金子他1998、p.p.77-74)。
政府は「信用担保」「妥当性確保」をし、民間が小さな知識の編集によって信頼醸成、サービス創造をおこなう。政府は信用や妥当性のために、情報公開・共有、評判システム(モニタリング)、メタルールの設定をおこなう(金子他1998、p317)。
その個別的分散的知識の相互編集が、コミュニケーションである。
■ボランタリー経済とは
 個別的分散的知識の相互編集による経済がボランタリー経済である。それは
①新たな経済文化の動向のことで、その動向はボランタリーコモンズ(共有知、自発する公共圏)領域でおこっていく。(ボランタリーコモンズは「共有地」であり「共有知」)
②多様な財が持ち寄られ、共有され、編集されていく、その「つながり」がもたらす価値生成のプロセスそのもの
である(金子他1998、p.p.14-40)。
■ボランタリー経済の必要性
市場経済システムや強制力による執行に裏打ちされた強い意思決定システムは、限界に来ている。それよりも、自由な意思が関係強化を求め、間世界をひろげる「弱さを内包するフラジャイル(弱さ)なシステム」が必要なのだ(金子他1998、p.p.36-40)。
■ボランタリー経済の手法
間世界をひろげる連鎖交換は、藁しべ長者(金子他1998、p390)にみられるような、おうむ帰しによる対話法が、有効である(金子他1998、p.p.179-183)。また、信貴山縁起物語にみられるような、都、村、山、個々に異なる富概念を外部知識者(山:山岳宗教者)が編集し、流通イノベーションを起こしている。外部知識者による編集は、鉢という道具を使い、お鉢を回していた(金子他1998、p.p.392-396)。
レヴィストロースは、間世界をひろげ物語を作る人を想定している。物語を作る人は、 ブリコラージュ(寄せ集めの器用仕事、臨機応変)によって、当事者であるかのごとき動的な視線を導入している(金子他1998、P377)。
 間世界をひろげる連鎖交換(お鉢をまわす)のための手法には、おうむがえしと、外部知識による鉢まわし、ブリコラージュが重要なのである。みんなでつくるあり合わせのブリコラージュこそ、クリエイティビリティや生産性があがる創発モデルになる(山納2016、 p177)

2 日本中世にあったボランタリー経済共同体
 日本には多様な自発的社会組織があった。外部の「弱者」であるネットワーカー(漂白者・遊行者)が出入りするボランタリーな共同体があった。この共同体は、情報に敏感、経済に敏感、娯楽に敏感であった(金子他1998、p.p.216-221)。
①会所:コーヒーハウスや茶の湯のようなクラブ=サロン型のしくみ(広い意味でのボランタリーなコミュニティ)が、経済と文化を同時に創発してきた。武士・禅僧の茶の湯による会所や、町衆(地下)の会所、納屋十人衆などはサロン型合議であり(金子他1998、p.p.114-116)、好み(金子他1998、p118)によって運営され、車座、寄り合いによる水平の合議による編集をしてきた(金子他1998、p117)。
 衆議による権力との対立があっても、衆議和合を基本に結束して対処した。
②結;共同体ごとの生産性・流通性に結びついた多様なサービスを用意した相互援助システム(フルーツバスケット)。短期の等量労働力の交換的な水平契約である。「知識結(外部の善知識を入れる)」こともある。構成員の活動の多様性を保証し、労働とともに神や物語、芸能があることで、共働の不平・不満を回避してきた(金子他1998、p.p.221-225)。
②講;共同体の不確実性に対処する(救済)ために議論した。山林・海洋資源保全のための山の神講・海神講があった。頼母子講、無尽など拠出しあった資金を用した利益で保険・貸付機能を持つ講もあった。
同業組合の講や、勧進(寄付)のための講もあった(金子他1998、p.p.225-231)。
③座;祭祀共同体からの発生し、全員にロールがあり座が決まっていた。神事の後に直会(共食)があった。神事の座が惣村の座になることもあれば、産業ごとの座、芸能の座などへと発展した。惣村では「衆議」の決議で「公」として発言・交渉し、有事には戦闘体制にもなる。(金子他1998、p.p.232-239)
④連:同好のネットワークであり、評判で評価された(田中優子『江戸はネットワーク』)

3 ボランタリー社会のつくり方
コモンズのゲーム(囚人のジレンマのような課題)は、何らかのルール(自生した規則性=制度感覚・もてなし=ホスピタリティ)とロール(自発的に割り振られた役割性=組織感覚・ふるまい=パフォーマンス)とツール(交流のための道具性=メディア感覚・しつらい=デバイス)によって、突破された。こうして自発的に活性化する新しい社会運営システム(金子他1998、p.p.139-152)が可能となる。
 これを、住民協働のまちづくりに則していえば、誰でも受け入れるオープンな場 と、住民・専門家・行政など個々に役割をはたすこと と、地域全員に伝えるメディア という理解もできる。
ニータ・ブラウン、ディビッド・アイザックス「ワールドカフェ」によれば
多くの新しいアイデアや社会的なイノベーションは、カフェやサロン、教会、リブングルームなどでのインフォーマルな会話を通じて生まれ広がっていった・・・カフェ的対話は人間社会における知識共有や、変革、イノベーションがおきるときの深くいきいきとしたパターンが現れている小規模なレプリカだったのではないか(山納2016、p168)
 このような、自発性にもとづく脆弱な魅力(知財)を編集する作業は、創発や創発するためのつながりづくり(金子他1998、p.p.164-164)に役立つが、総合的なまちづくりでは、おおきな場面展開(イノベーション)をもたらすものとして期待される。
 
金子郁容、松岡正剛、下河辺淳『ボランタリー経済の誕生』実業の日本社、1998年
  山納洋「つながるカフェ」学芸出版、2016年

|
|

« 宮本常一、酒と歩み寄り、篤農家、そしてバラバラに出稼ぎ | トップページ | ストック効果と社会的共通資本に対するコモンセンス »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 宮本常一、酒と歩み寄り、篤農家、そしてバラバラに出稼ぎ | トップページ | ストック効果と社会的共通資本に対するコモンセンス »