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2015年2月24日 (火)

二つのメディエーション【演習Ⅰ教材】

通学路安全や無電中化など地域の道路課題は、国道整備とネットワーク・連携してすすめていく必要がある。これからの国道事務所は、単なる国土軸としての国道維持管理整備のみならず、多様な国の支援制度を背景として、自治体を強力にサポートし国道地域の整備をする事務所になるべきだ。地域道路課題は、以下の事例に見られるように、自治体だけでは解決できない課題も多い。メディエータと自治体・住民の連携、それをサポートする国道事務所が必要だ。近畿地方整備局が、近畿地方の整備ではなく、近畿の地方整備であるのと同様に…
※地方のことは自治体に丸投げすれば問題解決できると素朴に考えるのは、現場を知らない机上論である。府県だけでは課題解決できない、県市が連携できない、基礎自治体間で連携できないなど、課題は多様にある。国は、国土を支える一つ一つの地域の自立的な地域づくりを、外部から強力にサポートする役割が、今、求められている。

■ 昨年夏、A市B区長・C課長とM教授が面談。M教授は、事故も多い狭い国道での通学路安全の課題を耳にして、C課長に国道事務所とも相談し議論の場を作るよう示唆した。M教授はD課員に国道事務所への電話を指示。D課員は、意味が理解できないままC課長と相談せず、国道事務所に電話する(言われたからとりあえず電話した)。国道事務所に、B区長の課題解決の熱意が伝わらず、区長の通学路安全解決の決意は3ヶ月間、放置された。
反省:国道事務所・C課長間の議論を仲介、立会いせねばならないところを、D課員に安易にメール指示したM教授(メディエータ)の安易さが原因
 11月、事態が進展しないことを危惧したM教授は、市役所区政支援室E課長に状況整理を依頼し、初めてDがC課長に相談しておらず、またB区長も事後のフォローをしておらず、膠着していたことが判明。判明後、はじめてC課長が国道事務所に電話連絡したが、課長は問題解決の困難を想定し、後ろ向きの連絡となった。結果、区長の問題解決の意思が、さらに3ヶ月放置された。
※区役所からみれば、28条2項で国道裏道整備が可能とMから聞いていたのに、国道事務所から整備にはA市の半分負担が前提といわれ、かつ28条2項の用件は□と◇、○、△、▽ですよと、用件定義を限定した法定協議会を求められたと考え、議論の場の設定に迷ってしまった。
 翌年2月、事態の膠着を危惧したMが、再度、市役所区政支援室E課長を通じてC課長に国道事務所も含めて問題解決の議論の場を設けるよう指示し、2月末、M教授がB区長と面談することを申し入れた。するとC課長、突然、国道事務所に行き、「国道拡幅は難しいし、予算もないし、現場議論に入って課題解決できなかったときの住民反発が怖い」と、動けない理由を並べ立てた。
反省:Mが国道事務所と区役所の協議に立会いメディエーション(通訳)すべきだった。メディエーションがなければ、相互のハード整備の「立場」「制度」の応酬になり、すすまない。子どもの安全という「利益」を第一に議論し、ゾーン30、裏道安全着色など、できることをすすめる。議論の必要に応じて、ハードも検討すべき段階で、メディエータが28条2項法定会議ですすめることもありえる。ステークホルダー相互が直接議論すれば、立場のぶつかり合いになって、前にすすまなくなる。
 2月末、Mは再度B区長C課長と会い、
「拡幅など難しいハード整備を前提とするのではなく、裏道安全などソフト整備の手もあるので、子ども安全を守るという利益に集中し、現場で多様なステークホルダーが議論することが大切である」
「確かに、現地には過去のハード事業のしこりもあり難しいが、住民反発は、実現しないことに対してではなく、今回のようなコミュニケーションレスにあるのではないか。住民はそれほどバカではない」と説いた。
※ 「Mの説明不足がコミュニケーションレスの原因でありMは反省している」
「100%解決を求め、できないと一人合点し、何もしないのではなく、多様なステークホルダーが集まり、少しでもできることを検討することから、始めよう」
「国道事務所もオブザーバーにして、一緒に議論しよう。そのメディエータをMがしようと申し出ている」
ことを、説明した。
国道事務所にも、法定協議会や既存の枠組みを提示するのではなく、ソフトくらいなら現場で話し合う中で臨機応変な対応ができることもあり、そこからハード整備もありえるので、連絡を密にすることからすすめるように期待したい
 
 以後、M教授が現地に入り、住民にヒアリングし、通学路安全の方策を国道事務所をオブザーバーに議論する。地元の議論の必要に応じて、A市建設局、B区役所が連携して整備をすすめるであろう。国道事務所とも情報共有し、国道事務所は必要に応じて、強力にサポートするであろう。
 半年の区役所内コミュニケーションレスを解きほぐし、2月末、やっと現場コミュニケーションが始まる。

■一方、2月、MはF区G課長との面談で、無電柱化を含めた住環境整備地区指定が住民議論にのぼっているH地区を紹介され、その問題解決の合意形成にあたる意思を表明した。Mは市役所E課長を通じ、住環境整備課長と面談(E課長立会い)。住環境整備課長は、
 ・H地区が住民合意をもってすすめようとしている状況
 ・他地域でも合意形成ができず無電柱化が頓挫したこと
をMに説明。
 ・その場合、道路の建設部局との連携が重要と示唆される。
 E課長はこの状況をF区に報告し、2月末日にMはF区長・副区長に「大学の住民合意のインターン教材として、H地区に入りたいので協力を依頼する」ことで面談する(E課長立会い)。
 役所間コミュニケーションの状況を察知したF区G課長は、A市総合まちづくり支援制度を使って、MにH地区ヒアリングの機会を与える。
 ※A市総合まちづくり支援制度:課題をヒアリングし、複数メディエータがチームを組んで、複数回にわたってメディエータを住民活動団体に派遣する支援制度。 
 ヒアリングでは(区政支援室、F区役所立会い)、住民幹部30人はやる気があるが、
 ①マンション等多くの住民への広がりがない。幹部は議論を多くの人に広げる必要性を理解できていなかった。
   ※ 話し合うなかで、M教授は10年たつと、活動メンバーの平均年齢は10上がると指摘し、広がりの必要性を指摘した。観光客の入れ込みをめざした住環境整備ではなく、多様な住民が誇りに思える住環境整備であるべきで、そんな素晴らしい街に外来客が来る。
 ②H地区住民は、住環境整備の想いはあるが、現実に何をどこまで議論して良いか理解できていない。サポーターもいない。
 ③イベント等のあり方について住環境整備などの目標設定ができていない。何となくイベント・・・
という状況を、Mは把握する。
 M教授は市の総合まちづくり支援制度を使い、
  ①多様な住民への広聴 を、F区中間支援団体のIさんに依頼する
  ③住環境整備にあわせたイベント を、元F区の中間支援団体職員J(今は別の区の中間支援勤務:住民の顔なじみ)に依頼する
  ②住環境整備の具体案 はMがメディエーションする
以上を、A市総合まちづくり支援制度ですすめることを表明する。
 Mは、I、Jとメディエーションチームを3月につくり、住民幹部との議論の場を設け、分担と課題解決方向、短期工程を協議する。
 その議論に基づき、3-4月に、
  ① Iは幹部以外への広報・広聴につとめ、
  ③ Jは幹部とともに住環境整備に則したイベントを検討し
  ② Mは、住民の住環境整備の意向、事業の活用方法を議論し、方向性と課題整理をする。
 M教授は住民議論のメディエーションをし、住環境整備の方向性と課題整理ができた5月頃、市役所E課長を通じて、F区役所、住環境整備課、建設局道路部局との協議の場を設け、対応を検討してもらう。国道事務所はこの状況を見守り、必要に応じて(三歩下がって)支援の方策を検討する。
 I、J、M教授と住民幹部は、区役所を交え、進行状況について意見交換する。5月以降、このプラットフォームに、新たな人材も加わり、国道事務所もオブザーバー参加し、A市の住環境整備、道路整備の対応も伝え、議論できるようにする。

F区では役所内コミュニケーションから住民メディエーションへ、わずか3ヶ月で動くであろう。そのなかで、国道事務所の必要なサポートも実現可能であろう。
B区は区役所内コミュニケーションがすすまず、6ヶ月たって、元の区役所議論からやり直すことになる。
【ここで質問です】   この場合、メディエータには、M以外に誰がいたでしょうか。
 


 
 

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