社会インフラのResilienceと道路管理事業組合の構想
1 問題意識
土木学会調査にあったように、直轄国道、高速道路のみならず、都道府県・市町村道など、地方の道路管理は、大きな課題につきあたっている。ここでは、後者の道路管理について議論する。
社会インフラのメンテナンスは、鉄道会社・民間企業total productive maintenance(日本プラントメンテナンス協会)をベンチマークせよといわれる。ここでは、(公社)日本プラントメンテナンス協会(以下JIPMと称す)SMR研究会『強靭な社会インフラのあり方』(2013年)を参照している。
2013年1月 社会資本整備審議会・交通政策審議会技術分科会社会資本メンテナンス戦略小委員会によれば、笹子トンネル事故のあった今年を「メンテナンス元年」と位置付け、SRM(ソーシャル・レジリエンス・マネジメント)を目標とすることがうたわれている。
そこでいわれるソーシャルと何か。JIPM2013年を参照し、それに私の問題意識を加味すれば【図1】のようになる。
2.想定される課題とインフラ対処
近年の自然災害激化、巨大災害の危機、社会的なコンプライアンス要求と社内的なコストダウンの要求によるコンフリクト、コミュニティ活動を担う人材の減少高齢化、情報依存性過多による現実対処思考の減退、省エネルギーの責務など、社会インフラシステムは厳しい外部環境にさらされている。
こうしたなか、全体最適による保全が要求されている。全体最適とは、PQCDSEMによって構成されている(JIPM)。そのPQCDSEMとは、Productivity、Quality、Cost、Delivery、Safety、Environment & energy、Moraleによってなっており、これにより保全せねばならない。【図2】
その具体は、
① メインテナンス技術者の確保、養成、技術の継承
ex.(公社)日本プラントメインテナンス協会
☛地方大学・高専・工業高校・道路建設業協会等の連携が必要である
② 道路管理マネージャーの養成、配置
ファシリテーション・ワークショップ技能、交通安全、維持管理、環境管理、EST・TDM、観光、防災などの限定知識のみならず、ぞれら全体をプロデュース、コーディネーションできる能力
☛大学院、国土交通大学校、道路環境・道路空間研究所との連携が必要である
③ 地方道路管理の組織づくり
☛道路管理事業組合【図3】
④ 地方道路管理事業のファイナンシングと民地活用
☛道路上空、道路面、道路地下の資金化、既存権利との調整
この必要性を歴史的に俯瞰すれば、
■民俗社会の設備 は、我々に及びもしない素晴らしい生活知、生存知によりなっているが、脆弱である。ときに、諦観にもとづく宗教観も必要となる。(ex.末法観による浄土教、災害と『方丈記』の史観)
■近代設備保全の考え方 は、エンジニアリング専門家が指導する社会インフラによる国土軸、インフラネットワーク、国土保全が構築され、社会インフラの脆弱性は、一定、克服できた。
■現代社会では、Social Resilience Management が求められる。
[平常時] には、SustainabilityとSmartが求められ、[非日常時] には、Redundant、Resilient が求められる。
しかしながら、3つの問題が発生した。
① 限定的賢明を持つ専門家が、限定的賢明性を全体と勘違いし、行政がこれを追認し、政策が迷走する
ex.大学の蛸壺化、専門バカ、御用学者
② 生活知は減退 ex.おまかせ民主主義、モンスター型市民、フリーライダー、
③ 平常時しか考えが及ばない
3.道路管理事業組合という考え方
そこで、道路管理事業組合という組織を作る必要がある。
現在都道府県道路部局と基礎自治体道路部局があり、道路建設の計画、実行、管理を行っているが、管理については、アスファルトの貼り換え、標識やカーブミラーの管理など以外、橋梁やトンネルについては十分とはえいないことは、土木学会の調査で明快となった。技術者もほとんど確保できていない。
こうした専門能力・資金の不足による脆弱性を、地域ごとに克服するためには、消防や清掃廃棄事業のような、広域管理組合を作る必要がある。【図3】
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