富士御師町と水
上吉田の御師町の南、富士山の遊水を集めた北口本宮浅間神社は、元は諏訪社であった。これに対して、下吉田にある小室浅間神社は富士二合目の小室浅間神社(山宮)に対して里宮と呼ばれる。里宮は、農耕の馬のための流鏑馬神事や、粥を管に詰めて農耕作を占うなど、都留平野の農耕の神である。山宮の山の神が、雪解け水とした遊水すると里宮の田の神になる。
(中央が北口本宮浅間神社、下が上吉田御師町)
(上吉田御師町、下が金鳥居、上左が北口本宮浅間神社)
上吉田では、山の神からいただく湧水を禊に使い、山に入っていくのが、北口本宮浅間神社である。神社の浅間鳥居は深い森の中にあり、60年に1回、建て替えられる。今年は、ちょうどその途上にあった。 その水は上吉田の左右の御師宿の門のなかを通っている。御師宿でも禊をして出発した。
(右下が橋、ここで禊をする)
このように見てくると、富士の湧水で農耕を司る下吉田の里宮と、富士の湧水で禊して山入りする上吉田の御師集落、農業と山岳信仰という、二つの水への信頼で、吉田はなっている。富士の生活的意味は、水にあったのだ。
ここで、享保18年(1733年)、食行身禄は、「衆生済度の道は加持や祈祷ではなく、実践道徳にある」として、断食入定した。その行衣野袴が祀ってある社も上吉田にあった。
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