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2013年6月24日 (月)

チェント・リコルソ チェントロ・ストリコ 陣内秀信

陣内秀信「時代を読んだイタリアの町づくりーその発想の転換から学ぶ」では、チェントロ・ストリコの考え方を、ボローニャで示した。職人が居住する細街路の町を「保存」することは、市民の手に都市を取り戻すことだ。
 こうして蘇ったチェントロ・ストリコは、車のない時代に人間の身体寸法ででき、居住者のみならず、外来者にとっても魅力的だ。人と人の交流も起こりやすい。観光学でいう「おもてなし」とは、街路案内やお辞儀の仕方のような表面的直接的なものだけではなく、チェントロ・ストリコのようなフィジカルな都市形態、およびそこに生まれるヒューマン交流をもさす。
 80年代のイタリアでは、公共事業としてばかりか、民間のディベロッパーがこうした古い建物を修復再生する事業に積極的に取り組んでも採算がとれた。富裕者層が、お金をかけて古い建物を見事に修復再生(レスタウロ)し、格好よく住むという都市のライフスタイルが登場した。
 イタリアでは、73年のオイルショックで北部の重化学工業地帯がダメージを受け、80年代に入る頃、中北イタリアの底力をもった中小の都市が、伝統的な蓄積を生かし、「第三のイタリア」=ファッション、デザイン、食文化など、いかにもイタリアらしい生活や文化とつながったグローバル産業が生まれた。歴史的な建物、町並みといったフィジカルな環境のストックに加え、地元の人材、技術、ノウハウなど、ソフトなストックが発見され、再組織され、現代的に組み立てられた。さらに、ストリート・デザインを工夫する動きがおきた。
 関西の某大都市でも、中核大阪の大商圏や、駅なか大商業施設に吸引され、都心商業が苦しい。いかに都市の魅力を創出するかが議論されだした。
 中心駅前から離れた中心商業地(京都の河原町、広島の八丁堀)からクルマを追い出し、皆がゆったりできる歩行空間、交流できる広場を模索する実証実験が模索されている。
 この都市ヒューマン核、ここから都市の魅力地に歩き始める広場を、私はCento Ricorso と呼んでいる。
 従来、盛り場amusement zone ,中心市街地 central business district ではない、交流や魅力に重きを置いて考えたとき、risort を思いついた。が、この言葉はリゾート開発のように手垢にまみれている。チェントロ・ストリコを含む、ゆったりした交流、ホッとするような懐かしい魅力を表現する言葉として、イタリア語のCento Ricorso を思いついた。
 これを日本の大都市で実現したい。

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