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2013年4月 1日 (月)

土井健司「スローモビリティ」『自動車技術』Vol.67, No.3、2013

かつて、道は徒歩が中心であり、通過のみならず、道でコミュニケーションし、子どもが道で遊ぶことも普通であった。いつしか、道路建設によるまちづくりがまかり通るようになった。
  しかし、都市の高年期(逆都市化=縮減化)においては、道路ダイエットが求められると土井は主張する。
 考えてみれば、自動車の浸透とともに、道は自動車中心となり、徒歩や自転車、荷車が排除された。子どもや高齢者を道路から排除した。信号機は、スムーズな自動車通行を担保するため、歩行者を炎天下や吹雪の中、長時間待たせる。傘をさして長時間待つ歩行者は、自動車の泥はねを受けつつ信号を待つ。生活道路にまで、猛スピードの自動車が入り込み、悲惨な事故を引き起こしている。生活道路でも、ベビーカーや車いすが排除され、制限され、ときに子どもと高齢者を殺している。
 市街地はロードショップとともに拡散し、中心市街地は空き地・空店舗だらけとなる。歩く空間の消失とともに、代々受け継いできた景観が失せ、まちの誇り・愛着心が消える。土井は果敢に「道路ダイエット」を訴える。自動車技術雑誌に!
 「道路ダイエット」と聞いて、今ある道路をわざわざ使えなくするのは無謀だと、早合点してはいけない。決して今ある道路をわざわざ潰そうという話ではない。片側二車線ある道路の一車線を、自転車道・超小型電動自動車道にするとか、自転車・バス専用にするとか、商店街や生活道路では、ゾーン30のように自動車の速度を落とさせるとか、路側帯を自転車道にして停めにくくするとかである。
 自動車のスムーズな通行ばかり考えることは、都市の景観や都市風格まで阻害するのみならず、土井によれば、過疎な市街地が速度超過と高い交通事故死亡率を誘引するという。
 土井は公共交通整備によりコンパクトシティと平行して、道路ダイエットが必要だと主張する。ただし、もう少し誤解を避ける言い方をすれば、これまで、自動車の時間短縮利益を最優先し、自動車に道路利用の優先を与えすぎたことに警鐘をならし、
 ①道路空間の再配分による多様なモビリティの尊重
と、
 ②道路時間利益の再分配
を土井が説いていると私は理解する。
 土井は、本来あるべき交通と都市の共発展の理念として
POD>BOD>TOD>XOD>COD
pedestrian徒歩>bicycle>transit公共交通>その他>car
を紹介し、単純化された解析モデルによる政策ではなく、道路ダイエットのような優先構造を示した理念による都市政策を主張している。
 魂のある先生が本学に来てくれた。深謝。

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