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2013年2月 3日 (日)

「コミュニティ交通のつくりかた」学芸出版、3/1発刊、1890円

歴史民俗系を逐電し、数年、まさかと思ったが、多くの仲間と、本を出すことになった。
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1319-1.htm
Amazonの新刊でみると、87位、コミュニティで19位、驚き‼
ぜひとも、ご注文を。 1890円(税込)
せっかくのランクイン、維持したい。
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 はじめに 負けない地域をつくる
序 章 なぜ、今、コミュニティ交通を協働でつくらねばならないのか
1 民間による交通資本整備の日本近代史
2 1ブロック1バス会社独占提供の課題
3 地域公共交通計画と大阪市交通局民営化
第1章 住吉台くるくるバス──都市住民が主体
1 現場の声をビジョンにまとめる
2 住民・行政・事業者の協働・役割分担
3 工程表と評価・工程管理
4 広報、ネットワークの手法
5 7年目の住吉台~六甲山麓に広がるバス誘致
第2章 淡路島・長沢ミニバス──過疎化地域住民が主体
1 全戸が年間1万円を拠出するミニバス
2 ミニバスのしくみ
3 住民はどう考えているのか
4 バス運行にはどんな効果があったのか
5 住民が運営するコミュニティ交通のつくりかた
〈森栗コラム〉協働してバスを走らす村と、電気自動車とタクシーのシェアを考える村
第3章 山口市市民交通計画──住民と事業者・行政の協働
1 「市民交通計画」ができるまで
2 交通政策の柱をつくる
〈コラム〉タクシー事業者の声/市民の声/運転手の声
3 地域における交通全体の充実を図る
〈森栗コラム〉山口市O地区でのできごと
〈森栗コラム〉山口市交通まちづくりが手本としたい日立市協定方式
第4章 京丹後・上限200円バス──事業者と行政の協働
1 論より便利、乗車行動こそ住民協働
2 住民・行政の本気度が事業者も変える
3 取組手順と成果
4 ネットワークと今後の展開
〈森栗コラム〉北近畿タンゴ鉄道をどう考えれば良いか
第5章 当別町コミュニティバス──民間企業と行政の協働
1 当別町と交通事情
2 官民共同によるバス運行
3 実証実験の実施
4 利用促進策の実施
5 利用者数および運行収入の推移
〈森栗コラム〉あるもの全部使わねば、北海道は守れない
第6章 RACDA高岡──市民団体の主導
1 RACDA高岡の考え方と取り組み
2 万葉線存続運動
3 市民協働事業によるコミュニティバス活性化支援
4 地域交通に関する諸課題と市民意識
〈コラム 会員の声〉私が行動しなければ、という危機感
〈コラム 会員の声〉活動は人がつながり、ひろがる
5 ひろがる公共交通市民活動ネットワーク
7 公共交通に対する市民意識の変革に向けて
 〈コラム 会員の声〉鉄道マンの意識が変わった~そして社会が変わった
おわりに 地域を守る知恵を活かせ

はじめに 日本のコミュニティづくりは、1・17、3・11の震災にふれないわけにはいかない。
 人口減・縮小社会のなかで発災した東北は、神戸のような復興は難しいだろう。同様に、多くの日本の地域社会も、再生や活性化は容易ではない。とはいえ、テレビ解説で聞いたようなうわ言を並べ、「デフレ」「デフレ」と老人鬱のように嘆いていても、何もはじまらない。
 経済成長しつづけ、永遠にカネが儲かる地域などあり得るのか。そもそもカネを儲け続ける必要があるのか。カネはちょぼちょぼだけれど、地域の特性、有利性を見極め、内外の人が交流し、微笑みあい、信頼が交わせる、出生率日本一の沖縄に学ぶ地域を、各地で育てる必要があるのではないか。
 こうした信頼にもとづくコミュニティづくりは、一人の専門家ではなく、多数の普通の人の手で実現する。コミュニティ生活の核心、コミュニティ交通を皆でつくるという作業は、人が行き来し、あいさつしあい、語り合う活性化の切り札なのだ。コミュニティ交通の計画では、大きな声、強いカネではなく、弱者(高齢者や未来を担う子どもたち)や、地域の片隅の声に耳をすまさねばならない。
 現代コミュニティはますます多元化し、多様な意見が噴出する。多様な立場がぶつかりあう。私たちは「おりあい」をつけて、コミュニティ交通をつくるしかない。コミュニティ交通を考えることは、つまるところ地域のリ・デザインをすることである。
 本書では、北海道当別町の地域連携バス、富山県高岡市万葉線と茨城県ひたちなか海浜鉄道・和歌山電鉄・三岐鉄道、京都府京丹後市の上限200円バスと北近畿タンゴ鉄道、神戸市住吉台くるくるバス、淡路島長沢の過疎地住民維持バスと超小型電動自動車、山口市の幹線整備・情報提示と住民協働型コミュニティタクシー・グループタクシーの試みを報告する。さらに、茨城県日立市の住民協定方式や大阪市交通局民営化にともなう交通空白区問題についても言及したい。
 「つくりかた」と銘うっているが、ここで紹介するコミュニティ交通のつくりかたをマネしたって、できっこない。参考にはなるだろうが…。むしろ、成功したコミュニティ交通のインフラ、モードに注目するのではなく、交通を自らつくろうとする想い、活動が、住民を活性化させ(ときには、行政職員や交通事業者を元気にし)、地域が躍動するプロセスに注目してほしい。コミュニティ交通計画づくりの手法(議論の場の設定、フィードバックとしての通信全戸配布、コーディネータの発見・確保、住民・行政・事業者の協働)も参考になる。が、それよりも、地域の有利性や人材を見つけだし、住民が「こんな町にしたい」という想いを広げるプロセスを感得してほしい。小さなコミュニティバス開通をみんなで万歳している「連帯する幸福物語」を味わっていただきたい。

おわりに 日本では、高速道路無料化、1000円高速、エコカー減税など、自動車に関わるものには、惜しみなく税金がつぎ込まれる。道路予算は5兆円を超え、旧自動車特別会計も5兆円を超える。年金補填と医療介護の予算は40兆円を超えて増え続けている。
 にも関わらず、新幹線と空港を除けば、公共交通には0・03兆円しか配分されていない。しかも、予算は、利用者や利用者利便の計画、設備に使われるよりは、交通事業者の支援に使わることが多い。赤字バス路線のバス、赤字バス会社の補填に使われることはあっても、坂道に苦しむオールドニュータウンの新路線支援や、過疎地の通学費用に苦しむ世帯の運賃支援、廃止寸前の地方鉄道に使われることはほとんどない。
 一方、自治体は、高齢者の移動支援のための公共交通無料券やタクシー補助には、福祉予算を組むが、現役世代・若者支援は皆無である。年金の多い高齢者が無料でパスを手にし、仕事を求める若者が高いバス代を支払えず、自転車で職安に通っている。こんな町に活気があるわけがない。
 そもそも地方では、無料パスを使うバス路線さえ確保されなくなっている。こうしたなか、各地で努力する自治体、市民活動、住民運動が起きている。単なる署名や要求ではない、自らすすんで地域のインフラを確保しよう、バスを運営しようという動きである。それに連動、協働しようという公共交通事業者(鉄道、バス、タクシー)も少なくない。
 本書は、その先頭に立つ、コーディネータ、行政マン、リーダー、分析者に書いていただいた。国や自治体の幹部や議員さん、交通事業者の皆さんは、本書を読んで勉強して欲しい。地域を守る知恵がこのように展開している。日本も見捨てたもんじゃない。せめて、国の生活交通予算を300億から1000億にすれば、全国の公共交通の運賃はすべて半額にできる。せめて、自治体の高齢者無料、タクシー支援を、若者、子育て世帯に半額で拡大できれば、この国の未来が見えてくる。
 鉱油税を公共交通に投資するのは、米国を含めた世界の常識、EUでは、運賃支援のための国境を越えた支援もある。日本の人口の半分の韓国では、国家事業として800億円の税金を入れて公共交通施策を展開している。最悪、日本国政府だけがなかなか変わらなくとも、富山市のように、首長のリーダーシップがあれば、公共交通を活かしたまちづくりができる。
 間もなく、わが国でも交通基本法が成立する。小さな第一歩であるが、生活交通の強化は待ったなしである。今こそ、政治の知恵が求められる。住民自治のマネージメント力が求められる。本書は、そのチャート(海図)の一助になると確信する。

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コメント

発売になったのですか。
書店に急がないと。
(吉田)

回答…ネットでは予約。書店では3/1日。吉田さんは著者分がありますが、多くの人に宣伝ください。

投稿: ひたちなか海浜鉄道 | 2013年2月 4日 (月) 11時02分

amazonから、発送が早まったとの連絡がありました。明日には届くようです。楽しみにしています。

投稿: えーぶる | 2013年2月19日 (火) 23時54分

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