西田純二「公営交通の民営化を巡る諸問題について」を学ぶ
都市計画学会関西支部で、西田純二先生(京都大学、社会システム研究所)、土井勉先生(京都大学)、宇都宮浄人先生(関西大学)のお話を伺った。ご教示いただいた最大は、
■コスト計算は、ネットワーク維持のためであり、そのための民営化
■operation と management は別に考えねばならない。
▼そもそも、(お上の)需給調整に従い、安全だけを根拠にし、サービス・商品提供を意識したことのない【かつてのJAL体質】60-70年代を課長で過ごした、現在の公共交通経営者の多くに、新商品が作れるわけがない。40才台に取締を任せるべきだ。
そもそも、移動サービス市場が一定の市場経済でなりたっているなら、行政が入り込んではいけない。市場の失敗があったから、市バスが走った。尼崎で言えば、阪神と阪急を結ぶ南北のルートを民間ができなかったから市バスができた。その市バスが高コストで維持が難しいなら、民間でやってもらって尼崎市内のネットワークを担保することは重要だ。
[以下は森栗個人の意見]
大阪市バスの民営化は、旧来の市バスコストの60%(民間水準)での黒字を全部譲渡し、それでも赤字になる路線(半分)は廃止だという。こうなると大都市圏の生活交通空白区域ができる。民ができるoperation を、官が手放すのは理解できる。官のなかの労務問題が高コスト体質を作ってきたのだから、この決断は必要だ。この状況のなかで、住民と一緒に、協働で本当に必要なバスを、皆でどう支えるかを考えるべきだ。
空白ができると大騒ぎし、結果としてarea management, trip management まで手放し、ネットワークを破綻させてはいけない。この隙をついて、パフォーマンスで民間事業者を呼び込もうとする区長がある。空白をつこうとする事業者もある。そんなことは、できない。させない。運輸局も内情を知っている。世の中をなめたらアカン。
しかし、百歩譲って東住吉区の個別解がOKだとしても、大都市圏全体のネットワーク・マネージメントを破壊するようなことは、絶対に許せない。勝手にしてはいけない。
今、全体の委譲や廃止後のarea management, trip management の方向を議論しているのは、市長の指示のもとの24区長会であり、選挙で選ばれたわけでもない一公選区長が勝手なことをして、大阪大都市圏のarea management, trip management を混乱に貶めるようなことをしてはいけない。ネットワークをはたんさせるようなこは、市長も区長会も交通局も許さない。
一方、従来の路線バス事業者のサービス創造力のなさ、コストカットしかできない無能を、西田さんは厳しく糾弾している。しかし、この譲渡をきっかけに多様な事業者(電鉄以外の、神姫や両備、日本交通、帝産など)が大阪市内に入る可能性があり、サービスコンペが期待される。多様な工夫が展開することが期待される。既存の路線バス事業者の隠れた力に加えて、地方のバス会社、貸切を基礎とした事業者に期待したい。
であるがゆえに、大阪市(または府市統合後の府)による area management, trip management は重要であり、バス事業の勉強もせず、専門家の意見にも耳を傾けない区長の独断は許されない。
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コメント
こんにちは。好いブログですね。またおじゃましたいと思います。
投稿: RALLY NEW WAVE | 2012年11月16日 (金) 14時57分
RALLY NEW WAVE さま
ありがとうございます
今後ともよろしく願います
投稿: 森栗 | 2012年11月16日 (金) 15時39分
こんにちは。よくご研究されていると思い勉強させて頂いています。他地域(海外も含め)との比較をされれば毎日でも伺いたいです!!
投稿: RALLY NEW WAVE | 2012年11月19日 (月) 05時48分