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2012年7月19日 (木)

山口市コミュニティタクシー5年目の潮目

コミュニティタクシーに関する内内の意見交換の議論を公開することにためらいはあるものの、この議論は、コミュニティ交通を考える行政、市民にとって極めて有益と考える。悩みつつも5年目に、一定の成果を得て、底を打ったのではないかと判断したこの時点で、状況を個人的にまとめてみた。 山口市は、
市営バス廃止
国庫補助による100円コミュニティバス(以下コミバスと称す)赤字
合併前の過疎地バス
合併前の要望のあったすべてを巡る複雑怪奇コミバス
 さらには
各地の住民からコミバス要望
既存コミバス既得権化
民営バス路線の廃止縮小
多くのクルマユーザーの無関心 など
 多様なコミュニティ交通課題をかかえる地方都市の典型。
山口市は2007年市民交通計画を策定し、フィーダー路線は住民主体で計画運営することが明示され、公募によって5路線が選ばれ、住民主体で幹線接続する地域内の路線、ダイヤ、その一定の採算性・効率性を考慮したコミュニティタクシー(以下コミタクと称す)実証実験が行われ、本格運行となった。3年以内に基準達成(平均乗車率30%以上、平均収支率30%以上)することを条件に、限度内の欠損補助を行っている。2008年からは、幹線路線バスと競合している旧山口市設置のコミバスの一部や、旧AJ町の複雑ルートのコミバス、2010年からは一部の過疎地交通を、住民主体のコミタク切り替えた。
 しかし、
・地域内にスーパーや病院がなく、隣町、少し先のスーパーまで幹線を競合してでも、直接行けないとコミタク利用者が増えない。
・そもそも人口が少ない。
・地元企業や病院も初年度は協賛金を出してくれるが、二年目以降は頼みにくい。
・運営するコミタク運営委員の住民も、毎年歳を重ね、苦しい。
などのジレンマが、2010年2011年のコミタク運営意見交換会で吐露され、「ここまで頑張っているのに、行政は無理な基準を押し付ける」といった不満もあった。そこで、地域事情も考慮し、事情のある地区は収支率25%基準に努力を継続する方向となった。
 ところが、先ごろ行われた2012年は、大きく雰囲気が変わってきた。23年度は震災後の出控えで利用者減だったが、24年は増えた。
OS地区…地区を越えてスーパーまで行く(延長分は地元で貸切る)買物便(毎週水曜)を実施。これまでの努力を活かして、実態に合った移動確保をすすめていく。
M地区12_3
・コミタクを利用したお出かけイベントを継続し、さらに路線を周辺地区やスポーツ施設に拡大しつつあり、MKスーパーからは路線延長要望がある。が、これまで待合場所など協力連携してきたMRスーパーを育てようということで、この時点ではあえてMKスーパーまでは路線を伸ばさない。
・コミタク利用でお出かけするイベントを継続して実施
・三周年プレゼント(地域づくり協議会から)
・別途地域づくり協議会から15万円/年、町内会から20万円/年、協賛金が出ている。「年寄りはカネを持ってんだから」との異論もあるが、地域の持続のためと皆が理解している
・M駅は跨線橋がなく利用しやすい。タクシーも待っているのでこの10年で1.5倍と利用が増えた。
KG地区…運営の中心に新たに女性が関与した。スポンサーから「確かにコミタクに乗って来てもらっている」「コミタクは地域のために大切だ」と理解され、その場で協賛金を支払おうというスポンサーもある。なかには「内科としてやっているが、実は漢方の専門でもあり、そのことを住民に伝えたい」という声もあり、地域資源発掘・地域活性化のためにもスポンサー意見交換会を開きたい。何か面白いことをしたい。若い人も乗れるコミタクをアピールしたい。小学校でコミタクを利用した公共交通教室がおこなわれている。
OG地区…土曜日運行を始めたら予想外に利用者があった。スーパーの特売日の選択肢が広がったとようだが、運営面からは追加車両が必要で収支率が落ちる不安がある。夏休みは子供も乗る。スーパーの待合ベンチ撤去もあったが、住民が要望交渉している。
AO地区…収支率、乗車率は無理なく達成。自治会、商工会、社協、婦人会が連携し、いずれバスは維持が難しくなるから、その前に対処すると最初から決めて取り組んでいる。コミタクは地域の資産として、まちづくり協議会からも20万円/年の支出がある。
SY地区…お婆さん曰く「私はJRではなくバスにする。買物、病院に行くとき跨線橋を渡らんですむ。AJ駅は上りも下りも跨線橋で辛い」
⇒すでに跨線橋がある駅を踏切化は法的に難しい。
⇒単線だから、単式ホームで跨線橋がない駅を中心にコミュニティ交通を整備したら良い
H20年10月、SYを一周し新山口まで行っていた旧山口市設置のコミバスが、幹線と競合するということで廃止され、地域巡回コミタクが新設され、路線バスを乗り継がねばならなくなった。住民には不便をかけたが、徐々に路線バス利用者は増え、24年10月から路線バスが10→16便に増便される。地方の生活路線バスが増便されるというのは、極めて異例。
・隣町のAJショッピングセンターまで伸びる買物便(延長分は地域が貸切)を4月から月曜のみ、タクシーの空き時間を利用して運行。しかし、買物時間を充分取れない。
⇒すべてのサービスを買物便でまかなうのは無理。ゆっくり買い物したい人、ついでに病院に行きたい人は、行は買物便、帰りは路線バス・コミタク乗換という手もある。
AJ地区…(OG地区の土曜運行を聞いて)ウチも土曜運行を検討したい。収支も心配だが、周知徹底した上で、わかりやすいように毎週土曜日の運行を検討する。4か月程度の実証実験とする。
F地区…スクールバスを活用したデマンド路線運行をしている。知事選挙の時には、臨時便を運行しようと思う。
SE、SZ地区…路線バスが5往復しかない。コミタクを地区で運営するのか、グループタクシー(バス停より1㎞離れている住民が対象)が便利なのか、行政が住民と現場で話し合い検討中。グループタクシー(一人でも利用できる)でバス停まで出るという手もある。

 可能な限り、既存路線バスを生かす方策を考えねばならない。

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コメント

初めてコメントします。
数年前に札幌で先生の講演を拝聴した者です。


駅の跨線橋の話は興味深いです。階段が鉄道の使い勝手を悪くしている面は否めないです。

あまり現実的ではないかもしれないですが、鉄道を地域の基幹交通として活かすために、駅を思い切って移転し、既往の道路踏切とホームを合体させるのも一案かと考えます。

逆にいえば、上下移動のないバスやタクシーは、まだまだ様々な可能性があるのではないでしょうか。

投稿: hagino-iburi | 2012年7月27日 (金) 00時56分

ありがとうございます。都市部や山口の市街地などでは、まだやるべきことがありそうです。お互い、今あるモノを活かして生かして、できる努力をしていきましょう。

投稿: 森栗です | 2012年7月30日 (月) 06時32分

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