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2012年4月15日 (日)

宇都宮浄人『鉄道復権ー自動車社会からの「大逆流」』新潮社

ヨーロッパにおける鉄道改革とまちづくりの変化、その基盤となる政策の変化に関して、丁寧に解説されている。

パリやロンドン・ストックホルムで、都心への放射状線を横串で縫う横断線としてLRTが、1990年代~200年代にかけて整備される経緯が興味深い。
 また、そうした都市インフラ整備を可能にした政策と理念についても詳しい。
【独】イコール・フィッティング=線路利用に料金が要るなら、道路利用にも料金を発生させねば不公平だ。 ex.レーバープラン(西独:1967年)=トラックに対する課税
1971年地方自治体交通財政援助法(GVFG) 連邦からの地方交通支援=鉱油税の45%
1996年公共交通近距離旅客輸送の地域化に関する法律
2007年 一般財源から地方旅客近距離輸送の建設コストに振り分ける

【英】ピーチング・アックス(1963年)=国鉄の不採算路線1/4を廃止
+不採算路線個別保証(労働党政権:1968年)

【仏】1982年交通権を設定し、地方税としての交通税を認めた。そして、都市圏交通機構(AOTU)を設置し、PDU(都市圏交通計画)をつくらせた。

市場に任せただけでは市場の失敗があるから、欧州ではこうした手をうったが、政府がサービス水準に関係なく不適切に支援する政府の失敗もある。

そこで、
1991年欧州指令440号で、上下分離、オープンアクセス(財政健全化)が義務づけられた。

これらを踏まえて、著者は、「短期的な損得勘定ではなく」「必要なら規格外でもOK」その英断を持てという。
 しかし、いかに高速道路無料化・エコカー減税を要求しても、道路財源は道路以外には使わせない署名が集まる日本の状況で、どう英断を待つのか?英雄か、それとも公共交通に理解のある旧国交省の大物官僚を市長にかつぐ(富山市)しかないのか?
 窮地にある日本の地方鉄道の中で、著者が紹介する数少ない成功例の南海貴志川線再生(和歌山電鉄)や、茨城交通湊線再生(ひたちなか海浜鉄道)に、高岡市万葉線の存続を勝ち取ったRACDA高岡が大きな役割を果たしていることに、私は注目する。

 目先のマイカー生活の利益を求める国民、将来の暮らしや地域の交通を考える活性化再生法を税金の無駄として仕分けたことに喝采する国民を前に、政治家にどんな英断が期待できるだろうか? むしろ、上記のような知識を持って、各地で公共交通インフラを守る、整備する具体的な協働の成果こそが、今、求められており、その活動の具体が新しい政策を呼び込むのではないか。
 「何が正しいか」以上に、RACDA高岡に次ぐ、行政と市民活動が連携した協働のまちづくりをいかに成すか、その具体が求められているのではないか。

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