北原糸子『関東大震災の社会史』朝日新聞選書
関東大震災の被害額は、東日本大震災の十倍以上、死者・行方不明は五倍以上である。同じ都市直下型地震の阪神大震災と比べても、被害額で二十倍以上、死者・行方不明で十六倍の大災害であった。
関東大震災の復興計画を練った後藤新平や、被害状況に関する研究はあったが、罹災者の状況を克明に総合的に追跡したのは、本書が初めてであろう。
この本を読んで、関東大震災、阪神大震災、東日本大震災の比較表を作ってみた。
避難すべき学校も消失した関東大震災では、路頭に迷った後にバラック自治会ができ、なかには、安否確認のために上京する人々に震災絵葉書を売り歩き、納豆行商をする会もあった。当時の住民の生活力には驚嘆する。
関東大震災では、リーダー(後藤新平、渋沢栄一ら)、住民、ボランティア、赤十字など医療班は奮闘した。国内外の義捐金も多く集まった。
しかし、政争により復興予算成立が大きく遅れ、後藤の描いた復興計画も頓挫し、その閉塞感のなかで、日本は海外侵略に活路を求めていった。
災害列島に暮らすことを思い知った今、この本の意味は大きい。
|
関東大震災 |
阪神大震災 |
東日本大震災 |
発生日 |
1923年9月1日 |
1995年1月17日 |
2011年3月11日 |
死者・行方不明者数 |
105385人 |
6437人 |
20349人 |
想定被害総額 |
約55-65億円(現代換算は難しい)⇒約112兆円※ |
約9.9兆円 |
約16-25兆円 |
主な被害死因 |
火災 |
倒壊、火災、関連死 |
津波 |
避難所 |
公園・空地(逃げ延びるのが精一杯) |
学校,自治運営傾向 |
学校、役所運営傾向 |
情報 |
震災彙報 |
新聞、ラジオ、ボランティアニュース、ミニFM |
デジタル情報、ミニFM |
応急対応指揮 |
◎内務省+協調会+済生会 |
△政府対応遅れる |
△国・県だより、市町村役場崩壊 |
政治的復興支援 |
△政争 |
○官僚主導 |
?政争 |
社会不安 |
治安、伝染病(衛生) |
高齢化 |
放射線 |
復興計画 |
△政争により |
○一応の住民参加 |
? |
※ 前年財政規模の3.7倍が55億円だとすれば、H22年度予算約92兆×3.7=約340兆円。現代に関東大震災が起きれば被害想定は112兆円といわれる。
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