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2011年8月22日 (月)

北原糸子『関東大震災の社会史』朝日新聞選書

関東大震災の被害額は、東日本大震災の十倍以上、死者・行方不明は五倍以上である。同じ都市直下型地震の阪神大震災と比べても、被害額で二十倍以上、死者・行方不明で十六倍の大災害であった。
関東大震災の復興計画を練った後藤新平や、被害状況に関する研究はあったが、罹災者の状況を克明に総合的に追跡したのは、本書が初めてであろう。
 この本を読んで、関東大震災、阪神大震災、東日本大震災の比較表を作ってみた。
 避難すべき学校も消失した関東大震災では、路頭に迷った後にバラック自治会ができ、なかには、安否確認のために上京する人々に震災絵葉書を売り歩き、納豆行商をする会もあった。当時の住民の生活力には驚嘆する。
 関東大震災では、リーダー(後藤新平、渋沢栄一ら)、住民、ボランティア、赤十字など医療班は奮闘した。国内外の義捐金も多く集まった。
 しかし、政争により復興予算成立が大きく遅れ、後藤の描いた復興計画も頓挫し、その閉塞感のなかで、日本は海外侵略に活路を求めていった。
 災害列島に暮らすことを思い知った今、この本の意味は大きい。

関東大震災

阪神大震災

東日本大震災

発生日

192391

1995117

2011311

死者・行方不明者数

105385

6437

20349

想定被害総額

5565億円(現代換算は難しい)⇒約112兆円※

9.9兆円

1625兆円

主な被害死因

火災

倒壊、火災、関連死

津波

避難所

公園・空地(逃げ延びるのが精一杯)

学校,自治運営傾向

学校、役所運営傾向

情報

震災彙報

新聞、ラジオボランティアニュースミニFM

デジタル情報、ミニFM

応急対応指揮

◎内務省+協調会+済生会

△政府対応遅れる

△国・県だより、市町村役場崩壊

政治的復興支援

△政争

○官僚主導

?政争

社会不安

治安、伝染病(衛生)

高齢化

放射線

復興計画

△政争により

○一応の住民参加


※ 前年財政規模の3.7倍が55億円だとすれば、H22年度予算約92兆×3.7=約340兆円。現代に関東大震災が起きれば被害想定は112兆円といわれる。

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