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2010年10月22日 (金)

『同潤会 大塚女子アパートメントハウスが語る』

関東大震災の義捐金基金をもとに住宅再建にあたり、火事を避ける鉄筋共同住宅を建設した同潤会は、戦後、住宅公団(現在の都市再生機構)として、多くの団地で2DKの寝食分離の住戸を建設してきた。そのなかにおいて、音楽室、サンルーム、屋上庭園、応接室、共同浴場、洗濯場、売店、食堂などの供用施設を持った職業婦人のための大塚女子アパートが建設された。個の生活を守りつつ、ゆるやかなつながりがある共同鉄筋住宅は、大正デモクラシーによる職業婦人、女性の保護・自立を目的として建設された。
 本書は、その居住者の語りから始まっている。『大いなる幻影』を書いた戸川昌子や、バイオリン音階教本を作り英才教育を始めた小野アンナ(小野ヨーコは姪)、「ともだち村」駒尺喜美が住んでいたとは、驚いた。

 その保存を求める運動をきっかけに、女性と住まい研究会の活動があり、本書につながっている。
 戦後の住宅政策は、個別標準世帯(夫婦と子ども二人)に南向採光・プライバシー確保の住宅を大量供給し、公庫融資による持ち家促進をしてきた。そのため、大塚アパートには、暗い・高齢化・時代遅れの誤解が与えられ、結果として解体された。誤解の一因は、当時の社会状況から、良家の婦女子の文化的で安全な短期滞在型施設としての位置づけの限界にあったかと小谷部は厳しく指摘している。
 にもかかわらず、大塚女子アパートの個別住居空間を保持しつつ豊かな(今日から見れば豊か過ぎる?)共用空間を有する建築理念は、ディンクス、シングルマザー、高年齢単身など家族の多様化、単身の増加がみられる今日において、再評価されるべきものである。
 本書は、大塚女子アパートを通じ、日本の住宅政策、男社会の住宅観の限界を照射し、これからの住まい、家族のあり方を提示してい点で、住宅に関心を持つ人、必読である。

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