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2010年9月24日 (金)

お遍路の宿の種類

旅の最大の課題、宿を決めるのは気が重いが、反面、楽しい発見、出あいもある。
 日本中を歩いた男・宮本常一は、有料や高い宿には泊まっていない。民俗学の在地研究者などを連鎖的に紹介されて泊めてもらうのはありがたいが、ちょっとした拍子に途切れる事がある。こんなときは、宿を乞うのが気が重いという。日本には、文武宿といい、文武の才能があるものが情報や技術を伝えれば、誰でも泊めてくれる宿があった。幕末の志士が東西を横行したのも文武宿があったから可能だった。備中高梁の油屋には越後長岡の河井継之介が泊っていた。この油屋こそ、寅さんシリーズに二度登場し、山田監督らが定宿にしていた文武宿。日本にはこういう無償の宿や、寅さんが泊まるような商人宿、駅前旅館があったが、今は少ない。無償宿は遍路宿にのみ残っていると私は推測している。

遍路宿には【今回宿泊数】、
1)通常の旅館・民宿(一般営業)・・・10
2-1)宿坊             ・・・ 6
2-2)大師像や掛軸を祀る旅館、民宿・・・2
3)割引など接待行為のある民宿・旅館・・・6
4)最低限の有償の善根宿・・・2
5-1)まったく無償の善根宿・・・4
5-2)通夜堂         ・・・4
6) 野宿           ・・・1
 がある。
 この分類と接待・善根度は必ずしも一致しないし、接待・善根度、信仰が高ければ宿泊料が安いというわけではない。1)一般営業でも、大都市のビジネスホテルで朝うどん朝食・珈琲付で3800円~素泊6800円の須崎プリンスホテルまで、いろいろある安宿に泊まった。最近は、個室のホテルが好まれ、2-1)宿坊も経営が難しい。二食付きで6800円で簡素な料理の宿坊もあれば、第六番札所安楽寺宿坊のように6500円でホテル並みの料金、二食付温泉で5500円と言う善通寺宿坊まである。通常の遍路道や札所の門前にある遍路宿(旅館、民宿)には、大師像や仏像が祀ってある宿もあれば、お遍路さんのために朝食は二つ黄身の入ったものを出したり、到着するなりドリンク剤を渡す宿、夕食時、明日のコースを自作の地図を使って絵物語のように語る宿もある。3)善根宿も、無償だと継続困難なので、3000円で二食付(旧教員宿舎、夕食はカレーなど通常食)から、母屋を善根で貸せば素泊1000円、掘立小屋なら500円という宿から、5-1)まったく無償の善根宿(納屋などに板、ゴザ、畳、ふとんを敷く)まである。空地に古いバスを置き、夕食・お茶まで運び入れる無償の善根宿もある。5-2)通夜堂のなかにも、八十八箇所札所内の通夜堂もあれば、村の大師堂を解放してくれたところもある。
 ただ、無償善根宿には半ば乞食の状態、浮浪者区別できない職業遍路(職遍)が長期間居付き村の酒屋に賞味期限切れの酒を要求したり、仲間を集めて酒盛りしたり、生臭い異臭を発する、部屋内部で自炊火気使用をする者、洗濯物を干して畳を滴で汚す者もいる。それがトラブルになり、閉鎖された善根宿は多い。空調はなく、扇風機がないという地獄もあった。5-2)通夜堂も同様である。
 そのため、無償の善根宿、通夜堂では、名前・住所・年齢を書いた納め札(弘法大師の絵を描いた細長い紙)を提出し、管理者の面接を受ける。女性専用の部屋がある宿もある。有償なのに、女性の野宿を見つけると無償食事付で泊めてしまう宿もある。なかには、掃除、草取りなどを課するところもある。私も生まれて初めて他人の家の庭の草取り・水撒きをした。職業遍路のなかには、僧は労働をしないと拒否する者もあり、若者が泊まる傾向の宿もあれば、認知症の一人暮らしの未亡人の善根宿に次から次へと職業遍路が集まり複数日居つくディープな宿もある。公園や道路わきの東屋、バス停小屋にも職業遍路が居つくことが多く、問題になっている。
 概して、四国の人は若者の遍路には優しいが、職業遍路、およびそれに風体が似たおっさん遍路とは関わらない。職業遍路の実態については次回。
接待・善根度と素泊経費

 

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