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2010年3月16日 (火)

東芝エレベーター広報誌にコメントが載りました。だらだら喋ったのに、上手にまとめていただいた。有り難い。東芝エレベータコンテスト:コメント

移動に“ドキドキする感覚” を期待したい
 今回、未来エレベーターコンテストの受賞作品を見て、「速度や効率を求める作品が少ない」ことに非常に共感を覚えました。
 私が今の都市に求めるものに挙げたいのは、“ドキドキする感覚” です。
 曲がりくねった道には「その先に何があるのだろう」とわくわくしますし、坂道は上りきった先に何があるのだろうと想像する楽しさがあります。
 真っ直ぐな道は移動効率はいいのかもしれませんが、こうした先の見えないことによる散策の楽しみは少ないのです。
 もちろん、都市とはまず「多くの人びとが集う場所」である以上、使い勝手のよいものでなければならないというのは前提条件です。しかし、人間が効率だけでは生活できない生き物であるならば、その人間が集まる都市にも、一見非効率に見える遊びの部分もまた必要な存在であると言えるでしょう。
 最優秀賞の「東京水系2030」は、ビジュアルの中心に「くらげに乗った老婦人が本を読んでいる」様子が描かれています。ゆったりとした流れに身を任せて移動し、移動の時間を豊かに過ごす。隣の乗り物に乗った人との会話もできる。「出会いが期待できる交通機関」というのは、コンテストの募集対象である学生の皆さんには大変興味深いテーマかと思いますが(笑)
 また、“ドキドキする感覚” という点では、「elevator park」も面白い。たくさんのシャフトで地上と地下を繋いでいるのですが、地下にギャラリーを設けて山車があるのがいい。あっと驚く感覚を移動効率を無駄にせずに実現していると感じました。この作品では舞台を東京駅前という既存の地下街が非常に発達した場所に設定していますが、人工地盤を使えば、他の都市でも実現できると思います。
持続するコミュニティーのインフラには「協働」を
 エレベーターやエスカレーターといった建物内を移動するための手段は、基本的に無料です。利用に際して料金が必要なものは、超高層ビルの展望台行きのエレベーターなどごく限られていると思います。
 日ごろ、お金を払うこともなく何気なく使っている階段やエレベーター、そして自宅前の道路などは、実は誰かしら管理者がいて、税金や共益費という形で運営コストを負担することで、自分もその権利者の一員であるわけです。しかし、これらのインフラを「自分のもの」と意識して使用している人は少ないのではないでしょうか。インフラを「自分のもの」として認識すれば、道路にごみを捨てたり、エレベーターにいたずらしたりする人も減るでしょ
う。では、そのように地域住民に感じてもらうにはどうしたらいいのでしょうか。
 そのために大切なのは、私は「協働」という考え方だと思っています。
 自宅前の街路樹を自分のセンスでメンテナンスできたり、エレベーターの清掃を当番制にしたりと、行政や管理会社に金銭で委託するだけではなく、管理に自分の汗を流すこと、そんな共働によって共感も生まれてきます。
 インフラを自分の手で管理しているものだと思えば、愛着も湧きます。地域住民が自分たちのものであるインフラの管理・運営に積極的に参加することで、その扱い方が変わるだけではなく、大切に扱われることで資産価値も増えるでしょう。マンションにお住まいの読者の方も多いと思いますが、普段何気なく使っているエレベーターをもう一度そんな見方で見直してはいかがでしょうか。(談)

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