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2010年3月29日 (月)

山村・張・藤木『世界遺産と地域振興』

2007年ユネスコは、第三回世界遺産委員会において、オマーンの動物保護区を取り消し、中国の世界遺産に対して警告を出した。雲南省の麗江も警告対象である。
 麗江は、成都とチベット、ビルマ経由インド方面(海のシルクロード)との茶葉を中心とした交易ルートの中継として栄えた都市遺産である。
麗江ウィキペディア
 しかし、世界遺産に指定されてからの開発は、世界遺産が中国の奥地開発の政治ツール化される(観光客数の増加期待・観光施設投資と収益増加)一方で、住民の生活の質向上になったかどうかを検証する必要がある。地域の自立的な制御=ガバナンスをおこなうマネージメントオフィスが必要である。

実際には、建物のファザードを守りつつ内部は大きく改変が許され、保護民居からは住民が出て、外部業者が入り込んで商売をすることになる。こうしたなか、宿泊客を制限したり、保護ガイドラインの遵守は、保護管理局が作られ(なかば強権的に)実施されているが、日本では住民合意は難しい。こうして、伝統文化(衣装や音楽、日常生活)が崩壊していく。そもそも、城壁に囲まれた都市ではなく、街並みを定義するのが難しい。その中での都市全体の景観保全は難しい。京都も同様。八坂の塔や清水坂を何とか保全しても、京都全体は普通の雑居ビルとマンションの塊といっても過言ではない。町家や京言葉、暮らしぶりといっても、落穂ひろいのような苦しさがある。
 しかし、地域の遺産を管理し保全し活かすということは、連続的落穂ひろいのなかにあるのかもしれない。麗江よりも保全は難しい日本でも、多様な試みがあっても良いように思う。それこそ、生活の質につながる問題である。地域資産を管理運営する組織が必要だと感じる。
 麗江では、ツーリストコンサートによるナシ古楽、民族衣装風ユニフォーム、現代トンパ工芸など、多様な試みがなされ、本書ではその課題が提示されている。これからの日本の観光地のあるべき姿を考えるとき、極めて参考になるジレンマが提示されており、観光による地域開発のあり方を考えるヒントになると思う。

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