続:両備の公共交通再生への実践・提案に学ぶ
両備の社長室所感「公共交通再生に向けて」で、気になる部分がある。
■中国バスの再建で明らかになったのだが、観光バスが1台1千万円高い、燃料がリッター10円高い、部品価格は3倍で、勿論、人件費も同様に高かった
一般に、クルマがあふれてバスが遅れる。遅れるからバスに乗らずにクルマが増える。クルマが増えるからと、バス離れスパイラルが、バス会社の課題といわれる。
A:営業的赤字スパイラル
しかし、それは経営の一面でしかない。
実は、赤字だから与信機能が無く資金調達できない。資金調達できないから、調達コストが高くなる。調達コストが高くなるから赤字が増えるという
B:調達の赤字スパイラル
がある。加えて、赤字だから労働条件で対立し、対立するから労組の嫌がることは何もできない、利用者利便より運転手の休憩時間を重視することになり、高コストで労使無会話となる。
C:労務面の不効率スパイラル
となる。
バス会社としては、学識者に渋滞による営業的赤字スパイラルを指摘されても、「いらんお世話」で、どうしようもない。赤字交通事業者の気がかりは、
B:資金調達赤字スパイラル>C:高コスト労務無会話>A:営業的赤字スパイラル
なのではないか。BとC、それに加えてAで、動くに動けないのではないか。
ではどうすれば良いか。
仕分けで指摘されたように、地方の交通は地方に任せれば良い。ただし、自治体に公金が行くと、特別交付税交付金のように、交通勘定で申請したのに、自治体に来るとほとんどわからなくなり、退職引当や他の債務処理に粉飾される恐れがある。一括交付金ならさらに危険。
全国10の地方に地域公共交通活性化再生支援評価機構を、自治体・事業者・市民の参画を得て設立し、そこが、各地の地域組織の連携交通まちづくりの動き(大は交通連合、中は現在各地にある地域公共交通活性化再生総合事業協議会、小は乗り合いタクシーを補助金無で運営する伊達市商工会議所、くるくるバスを守る会)を評価し、市民協働・利用者目線・環境負荷軽減観点から計画実行をアンケート、タウンミーティング、覆面調査で格付け評価し、複数年予算をもとに人的資金的に継続支援する。一方で、交通事業者には信用保証して与信を高め、安心して市民と協働して良い計画に参画して、その能力を市民に供与・活用いただく。もしも、破綻する会社があれば、保証者として機構が自治体に資金供給し、適切な救援企業を選定し、公設民営すれば良い。両備をお手本とする公設民営は、最後の手段のメニューの一つであろう。
余談・・・②調達面の赤字はなぜ起きたか?
実は、交通事業者のなかに危ない企業が多数あることは誰でも知っていた。ただ、それを公表すると与信できないから、これまで(赤字補助を見込んだ信用貸し)ごまかしてきた。しかし、近年、会計基準の国際化(連結決算、リスク公開、財務諸表公開、会計監査の過失責任、公正証書原本不実記載の厳罰化など)により、ごまかしきれなくなり、追い込まれた交通事業者は少なくない。だから信用保証が必要なのであり、交通事業そのものは走り続けさせるという公的担保であるから、JALと同様に、地方のバス・電車は守らねばならない。
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