角谷嘉則『株式会社黒壁の起源とまちづくりの精神』
豊中まちづくりフォーラムで角谷先生の講演を聞いた。今まで断片的に聞いていた黒壁の実像が、初めて見えた。素晴らしい。
黒壁の根幹にある光友クラブが明治の都市型近江商人から宗教家になった西田天香の思想=真宗の報恩で成り立ち、その解釈講師が蚕業に関わった福田長夫で、熱心な聴講生が縮緬業に出自し京都烏丸の大ビルオーナー長谷定雄(黒壁初代社長)らしい。
縦糸に長浜の絹織物が伸び、横糸に浄土真宗が縫いこまれいる。黒壁の二代目社長笹原の掲げた「無一物無尽蔵」(維摩経)は、衰退した70年代の長浜をいっているのかもしれない。曳山祭りの負担金さえ危うくなった山組や北国街道町衆の会のまちなみ協定、残飯が流れ汚れた米川の掃除を始めた自治会・商店街(とくに旧遊廓で山組に参加できない人々の努力)。衰退し無になった長浜から、三物が動き、今日の無尽蔵につながった。
豊中のまちづくりを主導した元副市長の芦田英機さんの言葉によれば、モデルになるモデル事業はないと。確かにファッションショーを見上げていてもトップモデルにはなれない。
では豊中はどうするのか。所詮、衛星都市にすぎない。長浜のような宗教哲学はない。縮緬のような歴史的縦糸もない。豊中の良さ「無一」を皆で探すしかなさそうである。問題点ではなく、庄内の唯一の強み、曽根の唯一の魅力、岡町の唯一の優越点・・・。これを皆で確認し、まちづくりフォーラムで語合うことではなかろうか。立派なホテルでの役所支援の無料講演会にしてはいけない。皆で膝詰めで語合う、本当のフォーラムが必要なのではなかろうか。
講師の角谷先生は33歳の気鋭。一生懸命、現場に学ぼうとしている。難しい立場のなかで頑張っている姿に、昔、高校教師の傍ら論文を書き続けた20年前の自分を見ているようで、密かに大拍手した。今は腑抜けの私が彼の前に出るべきではないかなと思い、懇親会には出ず、本を買ってそっと立ち去り、深夜に読んでいる。角谷さん、頑張れ!
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コメント
森栗先生
大変ご無沙汰しております。
フォーラムに来てくださったとのこと、ありがとうございました。
また、私の著書をご紹介いただき感謝しております。
まだまだ、不勉強で恥ずかしいですが、今後とも色々とご指摘いただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。
角谷
投稿: 角谷嘉則 | 2009年10月18日 (日) 18時28分