藤田綾子『大阪鶴橋物語』:4/26スーリズムメディエート論
大阪でコリアタウン、焼肉の煙たなびくターミナルといえば、皆、鶴橋を思い浮かべる。ところが、それは昭和52年MBSラジオおいでやす馬場章夫の取材からという。むしろ、鶴橋の一角に戦後の闇市バラックの風景を残す一角があることを、本書はみごとに指摘している。
鶴橋から少し離れた、御幸通商店街の一角に朝鮮食材の市場があり、鶴橋は戦後の闇市から出発して、流通の不充分な大和を含め大阪府一帯を消費地、淡路から松阪までを魚の供給地とした卸売市場の側面が強かった。そこに、朝鮮人の食材販売が徐々に移ってきたという。
もうひとつ注目せねばならないのは、戦後の闇市で焼け跡に勝手に商売が始まったように誤解されているが、事実は、戦中の疎開道路・疎開地として行政管理になっていた空地に、戦後、青空商売が起きたという事実の指摘である。
鶴橋は、日本の戦後史の重要な生き証人として、大きな意味を持つ。しかも、幸か不幸か開発されなかった。この人間的な空間を活かしつつ、老朽化した建物をどうするか?危険な建物をどう簡易防火し、耐震にするか。奈良県や大阪府中央卸売市場、大阪市東部卸売市場、それに卸売を通さないスーパーなど、鶴橋をとりまく厳しい経営環境に対処しつつ、古い個人資産である店舗をいかに安全にするか?難しい課題である。
◆鶴橋への直通での行き方【各地⇒三宮⇒阪神電車奈良行で近鉄鶴橋下車】
手をこまねいていれば、戦後史の生き証人、大阪人の生きた証はほどなく荒廃し、火事や地震などの災害をきっかけに、表は雑居ビルに変わり、裏道の区画はミニ開発ができねば、とりあえずの駐車場になるのか。それで良いのだろうか。
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