敬老パスと35歳人口政策
敬老パス(70歳以上の無料交通パス:名古屋市は65歳以上)が、激増する高齢化に絶えかね、制度が維持できない。神戸市、大阪市では、収入の多い人などへの有料パス・半額負担などへ改善する案が、議会や自治連・婦人会・議会などの福祉切捨て、高齢者切捨ての大合唱で、撤回・修正を余儀なくされている。大阪では、データーを示して丁寧に説明すると平松市長は言うが、データー以外にもなぜ敬老パスを改善しなければならないのかという、政策ビジョンの説明が必要だ。
そもそも、敬老パス(高齢者用福祉乗車証)とは、高度経済成長の果実を庶民に行き渡らせるため、美濃部都政が70年頃に始めた制度である。後にばらまき福祉と批判される政策の一つ。高齢者が激増して福祉予算に占める敬老パス予算が重く、問題視されてきたが、現業職員の高給など自治体交通局の非効率経営を裏補填したり、地方では赤字民間バスへの補助(補助しないと廃止される)の役割を担っている。しかし、既得権労働権利擁護の労働組合と既得権維持を組織存在意義と考える高齢者が多い地縁団体役員、及びこれを集票組織とする議員により、有効な改善策を示すことが難しい。
一方、NHKスペシャル「大失業時代、中間層の崩壊を食いとめろ」では、雇用の不安定で苦しい35歳:団塊ジュニアを取り上げていた。真面目に働いても雇用を失い、結婚や子育てをためらわざるを得ないという。このままでは日本の人口は減少し、高齢化を支える人がいない。GDPは0のまま、消費税が18%、年金が2/3になるという暗い予測が出ている。これに対して、番組では手厚い就業施策と子育て支援を充実すべき、つまり人に投資すべしと主張している。たとえば、総務省では企業による職業訓練に補助を出しているし、西粟倉村では託児所などの子育て支援、住居支援が充実している。育児手当、低額託児料、低額住居費で、17万円ほど余裕が出れば、収入の少ない林業であっても、自然豊かな田舎で就労できるのである。就業支援は失業給付の総額を減らし税収を増やす。西粟倉では老人倶楽部への補助を削って子育て支援にあてている。過疎に苦しむ村に子育て世帯が来てくれるならと、西粟倉の高齢者は、老人施策カットを受け入れている。
高齢者の移動を補償するパスを廃止するのではなく、みんなが安心して移動できるような市内交通の充実や、子育て支援、就労支援充実に使い、活力ある都市創造をすることをお約束して、収入や資産のある人に少し有料パスに協力してもらう。高齢者も半額程度は交通費を支払う。そのおかげで、子育て世帯や妊婦も交通費が半額になるようにする。これなら理解を得られるのではなかろうか。
大阪市はじめ、各地の議員さん、名古屋の河村市長。いかがでしょうか。勉強する真面目な議員さん、組長,担当部局のコメントを期待します。
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