路線バス事業は儲かる!「えっ?」
授業の合間をぬって、某新規参入の路線バス事業社長と面談した。わざわざ、遠くからお越しいただいた。売り上げを飛躍的に伸ばしたと噂される会社である。
路線バス事業は、モータリゼーションのなかで不採算となり、2002年までの規制緩和「参入撤退の自由」で赤字路線からの撤退をくりかえし、昨年の原油高騰で極めて厳しい。自治体の赤字バス補助も困難となり、頼みの高速バスも、路線でないツアーバス(停留所を維持したり、誰も乗らなくても走らせる、社会インフラとしての責任コストがない)に攻め込まれ、地域公共交通会議など、自治体の会議にも出ねばならない。
苦しいはずである。しかし、実際は、①長年の地域独占の余波で、顧客ニーズをつかめず、サービス経営ができていない。②労務管理が安全のみで、運転手・運行管理は顧客サービス・地域貢献の視点で仕事をしきれていない(ex.無愛想とか)③大手の管理者は地域ニーズをつかめず、つかんでも動きが遅い ④マーケッティング概念と、経営戦略がない ことに起因しているのかもしれない。
置き去られたのは、過疎地の住民であり、運転できない高齢者、子どもたち、それにこれまでバスを利用してくれた人々である。元気高齢者は85歳になっても、苦しくとも自動車に乗らざるを得ず、学生は危なくとも原付で走りまわらなくてはいけない。中高校生は、猛スピードで自転車をこぐ。障害者は移動できない。妊婦は、胎動を感じつつ遠くの産科に自分で自動車を運転して行く。
このバス事業者は、住民ニーズに合わせたサービスで乗客を増やし、原油高騰以来のクルマ離れを、増便、深夜バス、幹線とタクシーの接合、自社以外の路線・鉄道・公共施設などを入れた「生活地図」、待合所や屋根付バス停などのサービスで業績を上げてきた。今般、住民協働型の議論の場を作ろうという。行政ではない。バス事業者が考えているのだ。
曰く、我々も商売人です。新しいビジネスを立ち上げるときには、撤退を前提として考えています。でも、撤退するときのソフトランディングの二の手、三の手を考えておくと、一つの路線が成功したとき、二の手、三の手が、新しいビジネスのタマになるのですと。
要は、バス事業がダメなのではなくて、脱クルマオンリー社会への始動に鈍感で、地域のニーズに無関心で、大きすぎてニーズに対応できない、既存事業者の経営姿勢が問題なのだ。その際たるものが、自治体交通局赤字バス問題である。
この40年、急激にすすんだモータリゼーションが、これから20年、高齢化・若者のクルマ離れのなかで急激に変わるのは、歴史の必然である。
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