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2008年11月19日 (水)

鈴木毅理論を我田引水したソーシャルキャピタル狭小論への批判

鈴木 2000「人の『居方』」『JKKハウジング大学校講義録Ⅰ』小学館スクウェア

鈴木毅 2001「都市居住における個人の生活行動空間」『JKKハウジング大学校講義録Ⅱ』小学館スクウェア

を読んだ。鈴木のテーマは、「居方」。景観とプロクセミクス(人と人との距離・配置と関 係性 byエドワード・ホール)のあり方全体を対象とし、建築計画を考える(鈴木200054-56)のが、専 門だ。鈴木は、現代の都市計画が、単純な祝祭と日常アメニティとの組み合わせになりがちなことを批判し、都市の居場所とは何か?を問う。つまり、他者が居合わせる場としての都市像を考えようとしている(鈴木200063-64)。

そして、関係と認識の生成装置としての都市=都市に住む「てごたえ」(鈴木200066-67)こそが重要なのだと指摘する。では、どのような場に、我々はてごたえ=居場所 を感じるのか。鈴木は、遮蔽縁(しゃへいえん)【ギブソン「生態学 的視覚 論」】により、行動による流れる環境を認知するなかでの「てごたえ」=「奥 行きある見え」=景観の階層性を認知できる場 であると、結論付けている(鈴木200067-68)。居場所は、日常の世界と、別世との対 面の場にある。個室的空間でもなく、アミューズメントでもなく、その小さな接触点に居場所がある(鈴木200060)と鈴木はいう。ヤスパースのマージナルマンを出すまでもなく、卓見である。

そうなんだ。工学 や土木の分類・分析指標は、あまりに単純であきれかえることがある。鈴木はこの点も、見事に指摘している。たとえば、「生活の豊かさ指標」というのがある。項目は、住む、費やす、働く、育てる、癒す、遊ぶ、学ぶ、交わる、の8項目である。ところが、交わるの指標には老人会の加入率はあるが、若者の社会活動団体も入れても良いのに、「他に使える適当な指標がない」という理由で、入れられていない。指標のとりやすものだけで、交わるを評価できるのであろうかと鈴木は指摘する。また、公民館の数で「交わる」を評価している。しかし、公民館は、多様な人々が、交わり遊び、ときに学ぶところである。ところが、「生活の豊かさ指標」では、公民館を交わり指標にしかいれていない。鈴木は、特定施設を特定機能と結びつけて単 純化していると批判する(鈴木200146-48

。空間の多層的な見えを動態的に考察する鈴木からすれば、このような単 純化は我慢できない。そして、鈴木はJジェコブスを引用する。「立派な暮らしの価 値をおしはかるいくつかの試金石(学校、公園、小奇麗な住宅、あるいはそういったもの)が、すぐれた近隣住区を作るのだと考えられる風潮がある。もしこれが本当なら、人間の生活なんて何と簡単なものだろう・・・」(鈴木200153)と。

 近年、ソーシャルキャピタルと称する単 純指標を数 え上げ、何とか説 明しようとする計画 学の論文を見るが、制度と経 済 のなかで、ダイバシティと動態のダイナミズムがうごめく多層的現実 をみつめる鈴木やジェコブスの視点に学ぶ点が多かった。

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